すべての花へそして君へ①


(そっ、そう思ったらわたし……)


 あれこれ悩んでたこと自体もそうだけど、その悩んでた内容をバッチリ伝えちゃったわけで。しかも、その相手に相談しちゃったわけで……。


(何回も『好き』って、ヒナタくん言ってたようなものだ……!)


 な、なんで普通に好きって言うよりも恥ずかしいんだろ。ヒナタくんに教えてあげようかな。そうしたら、彼のぶきっちょさんも少しは治るかもしれないし。


「……え。だ、大丈夫?」

「どっ、どんとこいっ……!」

「いや、なにをレシーブする気満々なの……」


 こんなこと考えるんじゃなかった! いや別にダメじゃないんだけど、そうなったら彼が言おうとしてくれてる考え事自体が『好き』って言ってくれてるようなもので。


(めちゃくちゃ恥ずかしいし嬉しいし、すごい……照れるよっ)

「正直あんたのこと、めっちゃ変な奴だと思ってる」

(え)

「頭いいくせに、変なところでバカだし、アホだし、マヌケだし」

(て、照れとは……?)

「かと思ったら、もう異常なくらいの天才っぷりを発揮するわ、変なところでよく気が付くわ、勘が鋭すぎて怖いわ」

(は、恥ずかしさとは……?)

「しかも、めちゃくちゃ強すぎて敵無しとか、男のオレの立つ瀬がないし」

(えーっと……)


 おかしい。おかしいぞ。期待してた言葉と全然違う。そして、悲しいことに、次に出てくるであろう言葉も予想が付く。こんなところで実力発揮したくないけど。


「ちょっと理解しがたいことも、多々あるししょっちゅうあるしいつも思うし」

 ――グサッ。

「趣味を疑うし変なこと言い出すしそれが怖い時もあるし、全力でどん引きする時もあるし」

 ――グサグサッ。

「ああ。天才と変人は紙一重って、こういうことを言うんだなって数え切れないくらい思ってたし。あ。天才と変態の間違いだった」

 ……ガクン。


(も、もう。立っていられない……)


 レシーブの構えはいつしか解かれ、崩れるように膝が地面に突く。そしてそのまま、倒れる体を前に出した両手が支えた。


(変換しろ変換しろ変換しろ……)


 全然そうとは聞こえなくても。もはや耳から入ってくるのは悪口だけど。いや、そもそも本当のことばっかりだからわたしも異論は無いけれど。

 期待してたものと全く違ったから、構えていたところに全然ボールが飛んで来なかった。ここに飛んで来いっ! と思って構えたら、真横から後ろから下から上から、ドッジボールみたいにボールぶん投げられた感じだ。
 正直これを『好き』に変換するのは、流石のわたしでも……。取り敢えず、四方八方から飛んでくるボールに、二本ずつの手足じゃ足りないわ。千手観音様くらいあったら大丈夫だろうけど。

 ……また修行にでも行こうかな。今度は、あまりにも酷い彼のボールを受け止める旅にでも。