(そっ、そう思ったらわたし……)
あれこれ悩んでたこと自体もそうだけど、その悩んでた内容をバッチリ伝えちゃったわけで。しかも、その相手に相談しちゃったわけで……。
(何回も『好き』って、ヒナタくん言ってたようなものだ……!)
な、なんで普通に好きって言うよりも恥ずかしいんだろ。ヒナタくんに教えてあげようかな。そうしたら、彼のぶきっちょさんも少しは治るかもしれないし。
「……え。だ、大丈夫?」
「どっ、どんとこいっ……!」
「いや、なにをレシーブする気満々なの……」
こんなこと考えるんじゃなかった! いや別にダメじゃないんだけど、そうなったら彼が言おうとしてくれてる考え事自体が『好き』って言ってくれてるようなもので。
(めちゃくちゃ恥ずかしいし嬉しいし、すごい……照れるよっ)
「正直あんたのこと、めっちゃ変な奴だと思ってる」
(え)
「頭いいくせに、変なところでバカだし、アホだし、マヌケだし」
(て、照れとは……?)
「かと思ったら、もう異常なくらいの天才っぷりを発揮するわ、変なところでよく気が付くわ、勘が鋭すぎて怖いわ」
(は、恥ずかしさとは……?)
「しかも、めちゃくちゃ強すぎて敵無しとか、男のオレの立つ瀬がないし」
(えーっと……)
おかしい。おかしいぞ。期待してた言葉と全然違う。そして、悲しいことに、次に出てくるであろう言葉も予想が付く。こんなところで実力発揮したくないけど。
「ちょっと理解しがたいことも、多々あるししょっちゅうあるしいつも思うし」
――グサッ。
「趣味を疑うし変なこと言い出すしそれが怖い時もあるし、全力でどん引きする時もあるし」
――グサグサッ。
「ああ。天才と変人は紙一重って、こういうことを言うんだなって数え切れないくらい思ってたし。あ。天才と変態の間違いだった」
……ガクン。
(も、もう。立っていられない……)
レシーブの構えはいつしか解かれ、崩れるように膝が地面に突く。そしてそのまま、倒れる体を前に出した両手が支えた。
(変換しろ変換しろ変換しろ……)
全然そうとは聞こえなくても。もはや耳から入ってくるのは悪口だけど。いや、そもそも本当のことばっかりだからわたしも異論は無いけれど。
期待してたものと全く違ったから、構えていたところに全然ボールが飛んで来なかった。ここに飛んで来いっ! と思って構えたら、真横から後ろから下から上から、ドッジボールみたいにボールぶん投げられた感じだ。
正直これを『好き』に変換するのは、流石のわたしでも……。取り敢えず、四方八方から飛んでくるボールに、二本ずつの手足じゃ足りないわ。千手観音様くらいあったら大丈夫だろうけど。
……また修行にでも行こうかな。今度は、あまりにも酷い彼のボールを受け止める旅にでも。



