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必ず助けるとお約束します
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流石にもうカラカラに乾いていたから、ちゃんと残ってるか心配だったけど。無事だったその文字をそっと指でなぞりながら、オレは小さく息をつく。
「ね? だから、『洗ってくださいね』って言ったんですよ。アオバさん」
「……! どう、して……」
彼女と初めて出会ったのは、あいつが修行へ出ていった時。あいつの部屋までの案内に、シントさんが寄越してくれた家政婦さんが、彼女――アオバさんだった。
みんなはそれ一回ぽっきりだけど、あのあと道明寺に乗り込んだオレは、秘書の乾実栗から食事に誘われた時、もう一度彼女に会っていた。
その時渡したおしぼりのヒヨコさんを、まさかずっと持っていてくれたなんて。……しかも、持ち歩いてるし。
「オレがあなたのことを知ったのは、お二人に……クルミさんとカナタさんに、あなたのことも教えていただいていたからなんです。それから、カナタさんからいただいた昔の写真に、あなたも写っていらっしゃったので」
「……これは?」
「え? ……ああ、これは」
彼女が指差したのは、オレがあの時こっそり書いた、彼女へのメッセージ。
「秘書の人に気付かれないように、ささっと書いておいたんです。でも、どうしてあなたが言葉を話せなかったのか、写真を見てわかりました」
「……はい。かなた様にお仕えしていましたが、そのあとわたしは道明寺へと仕事場を移しました。お屋敷全般の家政婦として、働かせていただいていたんです」
「それであなたは、あいつに気付いてしまった」
「……はい。面影もありましたし。そうだろうと」
「ご自分を責めないでください。オレに〈危ない〉って、危険を承知で教えてくださったのは、他でもないアオバさんなんですから」
「……あおいちゃんの。お友達でしたので」
「アオバさん……」
「ですが、あとからあなたのことを教えていただいたんです。……その。裏切り者、だと」
「そう仕向けたのはオレなので間違いではありませんけど。でも、あなたのことも助けられて、本当によかったです」
「……っ。ほんとうに。ありがとうございましたっ」
アオバさんは、ヒヨコだったおしぼりと一緒に、オレの手を掴んで、何度も何度もお礼を言ってくれた。
アオバさんは道明寺へ来たあと、薬の存在を知らないまま働いていたそうだ。時々情緒不安定になる時はあったけれど、主人も、その妻も、秘書も、根はやさしい人だったと教えてくれた。
けれど、勤め始めて数年、話すことを禁じられてしまった。それは、あいつが道明寺に引き取られてすぐのこと。あいつを見て、ボソッと「あおいちゃん?」と口にしてしまったらしい。面と向かってではなく、画面の向こうのあいつにだ。
それを聞いた三人が、口封じにあいつを人質に取ったそうだ。あいつのことを知っていたアオバさんを、恐れたんだ。



