『そのあとでいいわ。時間をくれるかしら』
『そのあと』っていうのは、オレがみんなに謝罪を言い終わったあとのこと。アカネに欲求不満を指摘されたオレは、そのあとコズエ先生に会っていた。
真剣そうな表情だったけれど、なんだか嬉しそうでもあった彼女を捜しに、謝罪をし終えたオレは一旦会場に戻ってきていた。
「……いない、か」
会場には、もうあまり人はいなかった。流石にもう遅い時間だったから、休んでる人も多いのだろう。見当たらない先生の姿に、電話でもかけようかと思っていた時。オレと同じく、会場に戻ってきた人影が。先生かな? と思っていると。
「……え」
「あ! ひなたくん。よかった。是非君には紹介しておきたかったんだ」
「……あ」
「ほら、さっき話をしてた子よ」
写真で見てはいた。いつかは会いたいと思っていたから、今こうしてちゃんと向き合って、ちゃんと話せることがすごく嬉しい。
そこから現れたのは、カナタさんとクルミさん。そして、さっきまではいなかったはずの人。
「カナタさんクルミさん。実はオレ一度……いや、二度お会いしてるんです」
「え?」
「はい。実は。……わたしも今お目にかかって、お二人から聞いた話と彼が、一致しましたけれど」
「……? どういうこと」
カナタさんとクルミさんはきょとんとしていた。まあ無理もないだろう。オレとその人は、こんな縁もあるもんなんだなと、小さく笑い合った。
「あの、多分なんですけど、まだお持ちですか? あれ」
「え? ……ふふ。はい。ちゃんと大事にとっておきました」
オレらの話に、二人は首を傾げていた。
「なら、あなたのことだから“開いていない”んでしょうね」
「……はい。“壊してしまう”と、なんだかかわいそうでしたし。それに、わたしには作れないので」
彼女は、両手で大事に掬うように。そっと鞄から、白いものを取り出した。
「オレは『洗ってください』って言ったんですけどね」
「だって、……かわいかったですから」
両手に乗せて、嬉しそうにそう言ってくれる彼女に。オレも、なんだか嬉しくなった。
「……また何か、ちゃんとしたものお渡ししますよ。なので、ちょっと開いてみてくれませんか?」
「え。……それは」
「嫌ですか?」
「いえ。……その。話せなかったわたしにとって。あなたにもらったこれは、とっても大切なものだったもので……」
「……そう言ってもらえてよかった。すごく嬉しいです。でも、きっと開いたら驚くと思いますよ」
「え?」
そっと彼女の手の平に乗っている白いそれに手を伸ばす。
「あぁあああ……」
「……ほんとに嫌なんですね」
「うぅうううぅぅ……」
「……じゃあ、写真でも撮っておきますか?」
「はっ! と、撮りますっ!」
「あ。で、でもわたしカメラ機能を使ったことがありませんでした……」と、すごく残念そうに言う彼女に小さく笑いつつ、代わりに撮ってあげた。
「わあ……。……ありがとう」
「……いいえ。それはこちらも同じですから」
首を傾げる彼女に曖昧に返しながら、おしぼりだったそれを、一緒に開いていった。



