――知っていた。
話を聞き、全校生徒を人質に取られたわけだが、流石に負けてなどいられなかった。海棠の力を舐めてもらっては困るからね。
「……でもね、ぼくは何故か確信していたんだ。君が、血縁者なのではないかということに」
そして彼女の死後、彼女は誰にも言わなくてもいいと言ったが、ご家族には一応連絡をあげなくてはいけないと思い、秘密裏に調べを進めていたんだ。
そうして知ったのが望月。そこからわたしの母親を調べ上げたらしいが……。
「なかなか手こずったんだ、そこから。何せ相手は朝日向。どうして調べが進まないのかと思ったら、納得のいく結果だった」
「……理事長は、本当にやさしい方ですね」
「え? ……葵ちゃん」
恐らく、本当にすべてを動かしていたのは彼なのだろう。知らないところで彼は、ヒナタくんをも駒にしていたのだから。
「わたしのためを思って、だったんですね」
「……」
多くの罪を背負ってきた。許されることのない罪を。それを彼は願いと称して、わたしに罪を償わせるきっかけを与えてくれた。
それを、ヒナタくんが上手く利用できるようにとまで考えて……。
「今までしてきたこともそうでした。でも、きっとあなたが本当にしたかったのは、わたしに友達を作らせること、だったんでしょう?」
そんなの、これ以上ないほどのプレゼントだ。
もしヒナタくんが朝日向に辿り着けなくても、こっそり彼は、何かを口にしてヒントを与えるつもりだったのだろう。きっと彼ならそうすると思う。
つらいと。苦しいと。険しいと思って歩いてきた道。でも、それを今、こうしてきちんと振り返ると、たくさんの花々が咲き乱れていた。
「ぼくのやり方は、取りようによっては最低なやり方だよ」
「いいえ? これ以上ないほどの最高のゲームだったと、わたしは思いますよ?」
「……葵ちゃん」
きっと彼は、マ〇カ以外のゲームはとっても強いんだろうな。だってもう。何も知らない間に、まわりは固められているんだ。……始まる前から、結果がわかりきっていたなんて。
「ま。流した涙は返して欲しいですけどね」
「……はは」
やさしくて、あたたかい人たちに囲まれて。……本当に幸せすぎる。



