すべての花へそして君へ①


(わたし、ちっぽけなことで悩んでたのか)


 初めてのことだからわからなかったのはしょうがないかも知れないけど、ちょっと考えたらわかることじゃないか。ものすごく、必死に悩んでいた時間が勿体ない。


(そして今、ものすごく恥ずかしい……)


 いや、わたしよりもきっとヒナタくんの方が恥ずかしいだろう。正直、真面目に答える必要なかったと思うよ。質問者のわたしが言うのもなんだけど。
 よく答えたね、ヒナタくん。ものすごく言葉足らずだけど。回答としては不十分だけど。正解とはほど遠いけど。


「……はあ」


 チラッと上目で彼を見上げると、なんかものすごく疲れていらっしゃった。その原因も、間違いなくわたしでしょう。すんません……。


「……あのっ、ひなたくん」

「……なに」

「ご、ごめん」

「……なにが」


 ここで『何が』と申しますか、あなた。


「……こんなこと、聞いて」

「……なんで謝るの」

「お疲れのようでしたので」

「疲れてないよ。呆れただけ」

「あきっ!?」


 もっと酷かった▼


「あんたにじゃないよ」

「……えっ?」

「それから、ちょっと考え事」

「か、かんがえ、ごと……?」

「そう」


 何を考えていたのか。聞いたら教えてくれるだろうか。……聞いてみても、いいかな。


「聞かないの?」

「……!」


 もう一度さっきみたいに見上げて様子を窺おうとしたら、今度はバチッと目が合った。それに、聞きたがっていることがわかっていたのか、ヒナタくんは小さく笑っている。


「えっと……」

「ん?」


 わたしって、こんなに臆病だっただろうか。ヘタレヘタレだとはわかってたけど……いや、似たようなものなんだけどね。


「……な、にを。……考えていらしたんですか」


 やっぱり、ヒナタくん相手だと言葉が上手く出てこない。一番、ちゃんと出てきて欲しいのにな。


「オレが、言ってあげられる言葉」

「……え?」

「さっきのもそうだけど、オレはちゃんと言葉にしてあげられないから」

「ヒナタくん……」


 ……全部。全部、ぜんぶ。一緒なんだね。わたしと。


「……わたしも、ちゃんと言えない」

「オレよりは言えてるでしょ。羨ましいくらい」

「ヒナタくんも言ってくれていいんだよ? いっぱい」

「……気が向いたら」

「それは残念」


 でも、言葉がなくたって十分伝わっている。言葉が欲しい時もあるけど、そういう時はわたしがたくさん言ってあげるんだ。