離れていくあいつの後ろ姿が見えなくなって幾らか経った頃。放心していたオレのスマホがポケットの中で震えた。短かったから恐らくメールか何かだろう。急ぎなら電話がかかってくるだろうし。今は取る気にもなれなくて。そのままオレは、柱に背をつき、ズルズルとしゃがみ込んだ。
しばらくして、再び震える。急ぎだったんだろうか。優先順位は低いにしても、ちょっと気になり重い腕を動かしてポケットからスマホを取り出そうと手を動かす。取り出した途端、もう一度短く震えた。
……くそ。だれだよ。
画面は、ぼやけてよく見えなかった。零れそうになって上を向くと、顔の両側へ熱い何かが流れていった。
……はは。なんだ、それ……。
そういえば、オレとオウリとユッキーの三人でさっきお前に送ったんだっけな。これはあれか? その時の仕返しか?
┌ ┐
見事あなたは当選しました
オメデトーゴザイマース
①キツネの形の指一本
②チョキの形の指二本
③足の裏(※靴着用)
どれかひとつ、
お好きなものを借りられまーす
拒否権はありませーん
必ずひとつ選んでくださーい
選ばない場合は、
全てを実行に移しま~す
特別に貸してあげるから
借りたくなったらいつでも来なされ
└ ┘
……なんだそれ。デコピンに? 目潰しに? 最終的には踏ん付けられるのかよ。しかも靴アリで。……。なにが、アタリだ。大ハズレじゃ……ないかよ。
そう思った時。もう一度ブーッと音を立てて震えた。
……四通目?
┌ ┐
しょうがないから新たに追加しました▼
④取り敢えず声を出してみる
└ ┘
「……は。なん、だよ。それ……」
さっきあれだけ話してたのに。あれから、少ししか経ってないのに。
「なん。だよ。これ……」
カスカスに掠れた声。弱々しくて、情けなくて、鼻声で。
┌ ┐
思ったこと口に出せばいいんじゃない?
そしたら誰か拾ってくれるでしょ
└ ┘
そんな内容の五通目に、枯れた笑いが出た。



