「あーあ。オレがタンスから守ってやるんだったのによー」
「わたしだってチカくんをタンスから守ってあげるよ?」
あの頃が懐かしいな。二人で体育倉庫に入って、逃げて。話聞いてもらって、変態マンに助けられて。
「じゃあ、お互いがお互い、守ろうな」
「……! ……うんっ。もちろんだ!」
言葉の意味も、もう理解したんだろうな。誓いのもうひとつの意味はわからなかったくせに。
「子ども産んだらなんて名前付けるんだよ」
「ぅえっ!? こっ、こども!?!?」
「産まねえの?」
「そっ、それは。まだ先のこと、だし……」
「はは。……まあ、大人になっても、おっさんになっても、じいさんになっても……さ」
「……うん。ちゃんとタンスから守ってあげるよ?」
「ははっ。……ああ。オレも、守ってやるよ」
これからずっと、近付くようなことはないだろうけれど。それでも、この距離にずっと。ずっと、一緒にいられれば。
「幸せか。アオイ」
「え? ……そうだね。もっともっと幸せになりたいけどね?」
「はっ。贅沢が」
「なにおう?!」
オレは、……十分すぎるほど、幸せだよ。



