すべての花へそして君へ①


「あーあ。オレがタンスから守ってやるんだったのによー」

「わたしだってチカくんをタンスから守ってあげるよ?」


 あの頃が懐かしいな。二人で体育倉庫に入って、逃げて。話聞いてもらって、変態マンに助けられて。


「じゃあ、お互いがお互い、守ろうな」

「……! ……うんっ。もちろんだ!」


 言葉の意味も、もう理解したんだろうな。誓いのもうひとつの意味はわからなかったくせに。


「子ども産んだらなんて名前付けるんだよ」

「ぅえっ!? こっ、こども!?!?」

「産まねえの?」

「そっ、それは。まだ先のこと、だし……」

「はは。……まあ、大人になっても、おっさんになっても、じいさんになっても……さ」

「……うん。ちゃんとタンスから守ってあげるよ?」

「ははっ。……ああ。オレも、守ってやるよ」


 これからずっと、近付くようなことはないだろうけれど。それでも、この距離にずっと。ずっと、一緒にいられれば。


「幸せか。アオイ」

「え? ……そうだね。もっともっと幸せになりたいけどね?」

「はっ。贅沢が」

「なにおう?!」


 オレは、……十分すぎるほど、幸せだよ。