すべての花へそして君へ①


「……ひーくん……」

『ちょっとオウリ。今アカネにガン飛ばしてるでしょ。やめてよそんなことー』

「……飛ばしてない」

「いや。バッチリ飛んできてるよおー」


 だって、通話にしてるのは紛れもなくあかねじゃん。おれは、……ひーくんに言いたくなんてなかったのに。


『アカネに苛つくのはお門違いだからねー。あと、今オウリがしてるのを、世間的には陰口と言います』

「……別に。悪口言ってないもん」

『へえ。ムカつくって悪口じゃないんだー。へー』

「えっ。……ちょっとあかね」

「……はは」

『だから、アカネに文句は言わないの。言うならちゃんとオレに言って』


 ムカつくって、言ったの最初の方じゃん。あかね、いつから通話にしてたのさ。


『さっきは『あ゛か゛ね゛……っ!!!!』ってガッスガスの声して泣きついてたくせにねー』

「……あかね」

「まあ、……最初っから、かな?」


 今すぐあかねを背負い投げしたい▼


『ていうか何。オウリ、オレよりあいつのこと好きなの』


 四の字固めを掛けたい▼


『はあ。勝てると思ってんの? オレの方があいつ好きに決まってんじゃん』


 やっぱり果てしなく遠くに投げ飛ばしたい▼


(……ほんとに全部聞かれてる)

『しかもアカネ『うん』って言ったでしょ。 そんなわけないじゃん。オレの異常さ解らないならもう一回❽❾❿巻読んで復習してきてよ』

「な、なんでおれに飛び火するの……?」

『アカネも解ってなんだと思って。オレのストーカーさをもう一回読んでおいでよ』

「いや、いいよ。解ってる。解ってるから……」

(……言いたく、なかったのに)


 ただ、羨ましかったんだ。ひーくんが。ただ、おれがひーくんに嫉妬しちゃっただけなんだ。……確かに、ムカつくとは思ってるけど。でも、それは――。


『どうしたのオウリ。沖縄行った時はぶちまけてきたくせに』

「っ、それは! ひーくんが面倒なことしてたからじゃん!」

『面倒て……』

「いっつも! ほんといっつも自分から行かないじゃんか!!」

「おうり……」


 別に、陰口をたたいてたわけじゃない。羨ましい羨ましい羨ましいって気持ちが、あかねのせいで爆発したんだ。……あかねになら、ぶちまけていいかなって、思ったから。


「だいたいさ! 気付いてるんだから行ってあげればよかったんだよ! おれいっつもひーくんにパシられてるじゃん!」

『そーだねー』

「はじめは、あーちゃんのとこに行けるんだから嬉しかったけど。なんかもう、だんだんイライラしてきたんだよね! グジグジしてるひーくんに!」

『グジグジて……』

「そうじゃん!! あーちゃんのいろんなとこ、気付いてあげてるのに全部他人任せ! おれらに頼んでおきながら、いっつも心配そうにしてた!! 心配なら自分が行けばよかったじゃん!!」

『あー。ソーデスネー』

「……おうり。もうその辺にしときなって」


 ひーくんはひーくんで、わけがあってそうしてたのはもう知ってる。全部は知らないけど。……っ、でも、おれはっ!