「……ひーくん……」
『ちょっとオウリ。今アカネにガン飛ばしてるでしょ。やめてよそんなことー』
「……飛ばしてない」
「いや。バッチリ飛んできてるよおー」
だって、通話にしてるのは紛れもなくあかねじゃん。おれは、……ひーくんに言いたくなんてなかったのに。
『アカネに苛つくのはお門違いだからねー。あと、今オウリがしてるのを、世間的には陰口と言います』
「……別に。悪口言ってないもん」
『へえ。ムカつくって悪口じゃないんだー。へー』
「えっ。……ちょっとあかね」
「……はは」
『だから、アカネに文句は言わないの。言うならちゃんとオレに言って』
ムカつくって、言ったの最初の方じゃん。あかね、いつから通話にしてたのさ。
『さっきは『あ゛か゛ね゛……っ!!!!』ってガッスガスの声して泣きついてたくせにねー』
「……あかね」
「まあ、……最初っから、かな?」
今すぐあかねを背負い投げしたい▼
『ていうか何。オウリ、オレよりあいつのこと好きなの』
四の字固めを掛けたい▼
『はあ。勝てると思ってんの? オレの方があいつ好きに決まってんじゃん』
やっぱり果てしなく遠くに投げ飛ばしたい▼
(……ほんとに全部聞かれてる)
『しかもアカネ『うん』って言ったでしょ。 そんなわけないじゃん。オレの異常さ解らないならもう一回❽❾❿巻読んで復習してきてよ』
「な、なんでおれに飛び火するの……?」
『アカネも解ってなんだと思って。オレのストーカーさをもう一回読んでおいでよ』
「いや、いいよ。解ってる。解ってるから……」
(……言いたく、なかったのに)
ただ、羨ましかったんだ。ひーくんが。ただ、おれがひーくんに嫉妬しちゃっただけなんだ。……確かに、ムカつくとは思ってるけど。でも、それは――。
『どうしたのオウリ。沖縄行った時はぶちまけてきたくせに』
「っ、それは! ひーくんが面倒なことしてたからじゃん!」
『面倒て……』
「いっつも! ほんといっつも自分から行かないじゃんか!!」
「おうり……」
別に、陰口をたたいてたわけじゃない。羨ましい羨ましい羨ましいって気持ちが、あかねのせいで爆発したんだ。……あかねになら、ぶちまけていいかなって、思ったから。
「だいたいさ! 気付いてるんだから行ってあげればよかったんだよ! おれいっつもひーくんにパシられてるじゃん!」
『そーだねー』
「はじめは、あーちゃんのとこに行けるんだから嬉しかったけど。なんかもう、だんだんイライラしてきたんだよね! グジグジしてるひーくんに!」
『グジグジて……』
「そうじゃん!! あーちゃんのいろんなとこ、気付いてあげてるのに全部他人任せ! おれらに頼んでおきながら、いっつも心配そうにしてた!! 心配なら自分が行けばよかったじゃん!!」
『あー。ソーデスネー』
「……おうり。もうその辺にしときなって」
ひーくんはひーくんで、わけがあってそうしてたのはもう知ってる。全部は知らないけど。……っ、でも、おれはっ!



