すべての花へそして君へ①

「……聞けなかった」

「何が? 今聞いてよ」

「ううん。聞けた」

「いや、どっちなの」


 聞きたいことは、さっき教えてくれた。聞いたらちゃんと、教えてくれた。


「素っ気なかったでしょう?」

「え? いや、あれは素っ気なくしたわけじゃ……」

「うん。わかってる。聞けたから、今はちゃんとわかってるよ」


 あの時。聞くのをわたしは躊躇った。大抵のことは、知りたいと思ったら聞けるのに。


「オレが、そんな態度してたからでしょ」

「でもそれはわたしの勘違いで……」

「聞きづらいってこと、あるじゃん?」

「え? う、うん?」

「え。無いの?」

「あ、あっても、大抵突っ走るタチなので……」

「でしょうね」


 でも、それでも聞けなかった。ヒナタくんにはそれを躊躇った。というか、ヒナタくんには前から結構あるかも知れない。
 けど今は、『ダメだ』って思わなかったら多分、そのままにしてた。


「聞いたら、どうかなると思った」

「え?」

「さっきも言ったよね。『怖かった』って、へますることが」

「……うん」

「どうしてだと思う?」

「……ヒナタくんは、わかるの……?」


 案の定「そうだねー」と返ってくる。
 でも、わたしはその『どうして』の部分がわからない。わからないから、それを教えてもらおうと今ヒナタくんに聞いているんだ。


「何考えてんだろうなって、ずっと思ってたんだけど」

「へ?」

「それで、何か困ってるんならそれを聞いて、オレが答えられることなら答えてあげようって思ってたんだけど」

「……へ?」

「その疑問に至っては、オレが聞いておいてよかったって。ちょっと思った」

「え」


 答えじゃない。まさかの、質問に対して感想、だと……?
 聞いたのはわたしだけど、まさかその感想が答えとか、言わない……よね?