「ごめんね。わたし、ビビりだからさ。……大好きなみんなにだけは、嫌われたくなかったんだ」
でも、ちーちゃんに技を掛けた時、やっぱり同じ人だって確信した。一回、本気であーちゃんと勝負してみたいな。
「だから……言えなかったんだ。大好きだったから。好きで好きで好きすぎて。……怖かったんだ。嫌われちゃうのが」
あの時のクマさんパンツの写真、みんな持ってること、あーちゃん知ってるのかな。恥ずかしいって言っておきながら、きっと消してなんて言わなさそう。
「オウリくん? 聞いてる?」
「へへ。うん! 聞いてる~!」
にこにこしてたらそう言われちゃった。
うんっ。ちゃんと聞いてるよ。その声も……。好きなんだー。
「だから、わたしのことに関して何も言わなかったのは、本当にごめんなさい。でも、間違って欲しくない。帰ってくるつもりは、ちゃんとあったんだよ」
「あーちゃん……」
「まさか、全部バレちゃってるとは思わなかったけどね。でも、みんななら絶対気が付いてくれるって思ってた。流石に、新歓すっぽかして助けに来てくれるとは思わなかったけど」
嬉しいような。でもどこか恥ずかしいのかな。そんな顔で、苦笑いをしていた。
「だからね……? 信じて待ってた。オウリくん。わたしのこと、助けてくれて、ありがとう」
「……あーちゃん」
「わたしを助けてくれたのはみんなだよ? ヒナタくんだけじゃない。もしヒナタくんだけに助けてもらっていたら、わたしはまだ、……きっと苦しいままだ」
胸に手を当てて目を閉じて。緩く弧を描いている口元を見るだけで、彼女の中の苦しみはもう無いんだと。それが嬉しいんだと。それが伝わってきて、おれまで胸の中が温かくなった。
「だからね、本当にみんななんだ。みんなみんな。たくさんの人が、たった一人。わたしだけを助けてくれたんだよっ。だから、みんながわたしを助けてくれたから、アイくんもカオルくんもレンくんも、ちゃんと助けてあげられた! もしかしたら、みんなは世界中の人たちを救ってあげたヒーローかも知れないね! すごいっ!! いいな~。ヒーローにわたしもなりたいっ!」
なんで彼女は、こんなにも嬉しい言葉を、おれのために選んでくれるんだろう。おれにも、彼女ぐらいの力があればいいのに。
「……へへ。そっか~! じゃあおれは、あーちゃんのヒーロー?」
そしたらさっき、あんなことだって言わなかった。困らせることは、言わないでおきたかったのにな。
「うん! くそっ。わたしがみんなのヒーローになりたかったのにっ。先を越されてしまった……」
「へへ。やった! あーちゃんのヒーローだ!」



