すべての花へそして君へ①


「いたああ!!!!」

「え?」


 そんなことを考えながら、庭園にあるいろんな花を眺めている時だった。


「すごいっ! 迷わず来られた! わたし、天才かも知れない!!」

(いや、そもそも天才でいらっしゃいますよね?)


 そんなかわいらしいことを言いながら愛しい人がやってきた。……うん。やっぱりかわいい。


「そのライトのおかげで見つけられたみたい! あーよかった」

「……? そう、なんですか?」


 どうやら彼女は、俺を捜しに来たみたいだ。


「……おかえりなさい。あおいさん」

「……! はいっ。ただいま、アイくんっ」


 やっと、ちゃんとした笑顔が見られた。……それが今、ものすごく嬉しい。


「それはそうと、一体どうしたんですか? さっきは揉みくちゃにされて大変そうだったけど」

「そうなんだよアイくん! いや~。歓迎も過剰だと困るね! うんっ!」

「……とっても楽しそうに見えたよ?」

「はは。うんっ。やっぱり楽しいよね? みんなといられると」

「……はい。そうですね」


 走ってきた彼女は、俺の近くまで来て、照らしたライトの先を見つめていた。


「ここに来たのはね? ボロボロのピッチャーなりに、バッターのあなたから三振を取りに」

(……あ。なるほど九条くん。そういうこと)


 どうやらピッチャーは彼女自身のようだ。
 ……よかった。これは聞いちゃダメだ。危うく彼女に聞くところだった。


「どうしてボロボロなんですか?」

「あ。バッターは疑問に思わないんだね」


 ……不味いと思った。彼は何も言ってはいないけど、多分これはバレちゃいけない。


「ううん。あおいさんが今自分でピッチャーって言ったから。相手はバッターだし、そう言われて何となくわかったよ。……君が、何をしに来たのか」

「……そっか」


 上手く誤魔化せただろうか。……できてなかったらごめんね、九条くん。


「好きってさ。答えがないでしょう? ……違うか。何パターンもあるでしょう? わたしは、そういうのが全然わからないんだ。まあ、わかる人は多分いないだろうけど。それでもそのパターンが、わたしにはもうほとんどないに等しいんだ」


 ……そうか。俺が五番ってことは、だ。


「……もう、誰かを三振してきたんだね」


 それだけで十分だった。返事の仕方で、相手がどう思うかなんて、言ってみないとわからない。こればっかりは。


(……いや)


 もしかして……だけど。


「もしかしてあおいさん、その自分の答えすら……言わせてもらえなかった?」

「っ、え?」