すべての花へそして君へ①


「うわあ~! すっごい綺麗ですね!」


 夜遅いからか、ライトは足元を照らしてくれる小さなものだけ。庭園に入った俺は、手元にあるスマホのライトで辺りを照らしながら、一人で感嘆していた。
 いつも一人だったからか、どうやらいつの間にか独り言が多くなったらしい。


「うちはこんなに立派じゃなかったからなー。なんだか新鮮だっ」


 別に、花がすごく好きってわけじゃない。ただ……やっぱり(ハナ)と呼ばれていた彼女を思い出して、道端に咲いた小さな花さえ、愛おしく思えていた。
 どうやら皇には、温室もあるらしい。俺も、明日はコズエさんに呼ばれているから、あとで元気をもらいにそちらにも足を運んでみよう。


「う~ん。にしても九条くんは、俺に何を頼みたいのか……」


 五番バッター?
 ピッチャーに自信をつけさせてください……?


「……流石に俺、プロ野球選手に知り合いはいないよ」


 いや、多分自分の解釈がおかしいんだろう。一体何のことだろう。


《彼氏有力候補より》

 ………………? 


「え。九条くん。何してるの」


 もたもたしてるんなら、さっさともらっちゃうよ? いやまあ、あの幸せそうな寝顔を見たらもう答えなんてわかってるんだけど。


「いいなー。俺も一緒にお昼寝したい」


 あの頃もし、俺も二人の中に入って遊んでいたら、どうなっていただろうか。


(まあ過去は過去。あの時俺に勇気があれば、何かが変わっていたことに変わりはないんだ)


 それを今どうこう言うんじゃなくて、これからをどうするのかだ。俺はもう、後悔だけはしたくない。


「……きちんとお話しできて、よかったあ」


 皆さん、本当にやさしい方ばかりだ。
 一番お話ししたかった九条夫妻にも、きちんと謝罪できた。……案の定、そんなものはいらないとはね除けられたけど。
 ただ一言、こんな自分に『よく今まで頑張った』と言ってくれた。……少し、昔の父が重なって見えた。