「うわあ~! すっごい綺麗ですね!」
夜遅いからか、ライトは足元を照らしてくれる小さなものだけ。庭園に入った俺は、手元にあるスマホのライトで辺りを照らしながら、一人で感嘆していた。
いつも一人だったからか、どうやらいつの間にか独り言が多くなったらしい。
「うちはこんなに立派じゃなかったからなー。なんだか新鮮だっ」
別に、花がすごく好きってわけじゃない。ただ……やっぱり花と呼ばれていた彼女を思い出して、道端に咲いた小さな花さえ、愛おしく思えていた。
どうやら皇には、温室もあるらしい。俺も、明日はコズエさんに呼ばれているから、あとで元気をもらいにそちらにも足を運んでみよう。
「う~ん。にしても九条くんは、俺に何を頼みたいのか……」
五番バッター?
ピッチャーに自信をつけさせてください……?
「……流石に俺、プロ野球選手に知り合いはいないよ」
いや、多分自分の解釈がおかしいんだろう。一体何のことだろう。
《彼氏有力候補より》
………………?
「え。九条くん。何してるの」
もたもたしてるんなら、さっさともらっちゃうよ? いやまあ、あの幸せそうな寝顔を見たらもう答えなんてわかってるんだけど。
「いいなー。俺も一緒にお昼寝したい」
あの頃もし、俺も二人の中に入って遊んでいたら、どうなっていただろうか。
(まあ過去は過去。あの時俺に勇気があれば、何かが変わっていたことに変わりはないんだ)
それを今どうこう言うんじゃなくて、これからをどうするのかだ。俺はもう、後悔だけはしたくない。
「……きちんとお話しできて、よかったあ」
皆さん、本当にやさしい方ばかりだ。
一番お話ししたかった九条夫妻にも、きちんと謝罪できた。……案の定、そんなものはいらないとはね除けられたけど。
ただ一言、こんな自分に『よく今まで頑張った』と言ってくれた。……少し、昔の父が重なって見えた。



