「待ちなさいカオル! 詳しく事情を聞かせてもらうわよ!!」
「コズエさんの嫉妬はかわいいですねえ」
逃げよう。今だけは。だって……信じられない。
今まで以上に、彼女が愛おしくて。逸る鼓動を、走って走って誤魔化そう。
(ああ……。しんどい、ですねえ……)
きっと気のせいだ。またいつもの自分に戻らないと。
……あれだ。きっと桜のせいだ。当てられたんだ。このあたたかさに。
(どうしてしまったんですかねえ……。本当に……)
そんなこと、ありえないだろうと。ただただ言い聞かせて。
逸る鼓動を、震える指先を。彼女から逃げて誤魔化した。
逃げた先はもちろん彼らのところ。彼も彼でどうやら変な悩みがあるようですが。……ま、そんなのは杞憂では無いかとぼくは思いますけれど。
(……だって彼女は)
ただ黒にしただけの彼のことを、かっこよすぎて見られないくらいには、べた惚れのようですから。



