……とか思ってたら、ひなクンは完全に固まってしまっていた。
「あ、あれ? ……ひ、ひなク~ン……?」
彼の前で、手を翳してみる。バイバ~イ……って、してみる。「これ何本?」って、チョキを出してみる。……全然応答がないです。どうぞ。
「(……全然、意識してなかった。え。なにそれ。あいつの助けになれればいいとか、思ってたけど……)」
うんともすんとも言わないひなクンに、はて、どうしたものかと悩んでいたら……。
「――!? ……ひっ、ひなクンっ!?」
「っ!!!! すみませんっ……。自制しますっ。ごめんなさいっ!」
急に、ボンッッ!! と顔が真っ赤になってしまった。
「いやいや! 別に謝んなくてもいいから! あおいチャンが好きすぎるのを、おれが見ててムカついちゃっただけだから!」
「ごめんなさいっ。アカネにムカつかれるほどオレは欲求不満だったみたいですっ」
「いやいや、ひなクン。どうしてそうなっちゃったかな……」
「恐ろしい。オレの欲望が恐ろしい」
「いや、うん。それには『そうだね』としか返せないよ」
「マジごめんっ。ホントごめんっ。うっわ……。みんな気付いてるよね、そんなの。うっわ。引くわ~……」
「……取り敢えず落ち着こっか。もう時既に遅しだし」
「嫌だー……。戻りたいっ。生まれた瞬間からやり直したい」
「そんな無茶な……」
両手で顔を覆い隠したひなクンは、イヤイヤと首を振りながらすっかりしゃがみ込んでしまった。
取り敢えず、今はひなクンがだいぶ重傷なので、しばらくお待ちくださ~い▼
「ねえひなクン、聞いてもいい?」
「……! ……な、なんですか……」
今は年相応っぽい。いつもずっと一緒にいたのに、こんな彼を見られることが、ちょっと新鮮だ。
「多分、ひなクンのことだから、ほんとにアフターフォローしに来たんでしょ」
「……」
「教えて? どうしてここに来たの?」
俯いていた彼からはすっかり顔の赤みが消えていたけど、どうやらまだ、少し恥ずかしいらしい。
「い、いらなく、ない? あれだけ殴ったんだから……」
「あれはあれ、それはそれ。そんでもって、これはこれ」
そう言ったら、少し拗ねた顔になる。
珍しいな。こんなに彼は、表情がコロコロ変わっただろうか。……ちょっと嬉しい。
「……多分、アカネは隠すと思ったから」
「うん。まあ、あおいチャンにはバレちゃってたけどね」
「え。四番はバレてないよね?」
「多分それはバレてないよ?」
そう言ったらほっと息をついた。
……うん。だろうね。もしかしたら彼女にも自分が相当の欲求不満だということがバレてるかも知れないからね。ひなクンからしたら、それは断固阻止しなきゃだもんね。



