すべての花へそして君へ①


 ぐいぐいと攻め入るおれの質問に、彼は本当にわかっていないようで。ただただ首を傾げている。


「……はあ。やっぱり面倒臭いな」

「え。あ、アカネ、だよね……?」

「そうだよ!! ……もおー! ひなクンっ!!」

「はっ、はいっ」


 こうなったらもうやけっぱちだ!
 鈍感すぎる君の奥底の気持ち、おれが――教えてあげるっ!!!!


「このぉぉおお~……。欲求不満がああ!!!!」


 おれは大きく振りかぶり、軽く彼の顔に『あかねパンチ!』を食らわせた。


「いてっ」


 そのあとはポカポカ、頭とか肩とか、そこら辺を叩く。


「なにさ! まだ彼氏有力候補さんのくせに!」

「え。い、いやまあ、メールでそう言ったけどさ……」

「なにさ! まだあおいチャンの彼氏じゃないくせにっ!」

「え。いや、はい。そうです、けど……」

「なにさ! 彼氏に早くなりたいからってえー!!」

「……え?」


 ポカポカ! こんな頭、いい方にバカになっちゃえ!


「なにさなにさ! どうせあおいチャンを早く抱き締めたいんだろー!」

「(普通にしてますけど……)」

「なにさー! あおいチャンにもっとたくさん触りたいんだろー!」

「(いやまあそうだけど、そんな関係になる前からめっちゃ触ってるとか言ったらキレる……よね、多分)」

「なにさ! なにさなにさ! あおいチャンともっとちゅーしたいんだろー!!!!」

「(も、もっと……って、え。なんで既にしたことをアカネは知ってるんですか)」


 ポカポカポカ! バカになれ~! バカになれえーッ!!


「こんなことしてえ! 早くあおいチャンを自分のものにしたかったからでしょお!?」

「え」

「結局はひなクンが我慢できないからでしょお!!」

「え」

「あおいチャンを自分のものにしたいって! 早くひなクンが安心したかったからでしょって言ってるんだあ! この欲求不満っ!!!!」

「……」


 言ってやった! いっぱい殴ってやった!
 ああもおおー!! おかげでモヤモヤイライラしてたのが、ちょっと治まっちゃったじゃんかあー! ひなクンのバカ! ありがとおー!! ばかあー!