すべての花へそして君へ①


「一番は……?」

「……トーマ。大きくストライクゾーンを広げて、思いっきり空振ってくれた」

「……二番は?」

「アキくん。アキくんも同じ。だから、ピッチャーはちょっと自信ついた」

「三番」

「レン……だけど、ピッチャーが大暴投して、危うくデットボール。でも、いろいろ言った、言われたらしいけど、ちゃんと三振は取れたみたい」


 なんとなーくわかったようなわからないような。でも、だったらもう、おれはいらなかったんじゃないかなって、ちょっと思ったり。


「オレもちょっと驚いた。ピッチャーはキャッチャーと仲直りしに行ったんだ」

「……そっか」

「キャッチャーは、ピッチャーがそんな風になってるのを知らなかったんだけど、わざわざ来たから、多分わかったんだと思う。……ちゃんと受けてくれることになったらしいよ」


 そのキャッチャーが一体誰なのか。味方になろうとして逃げたのは誰なのか。
 なるほど。少しずつ、噛み合ってきた。


「……それで、おれは?」

「ん? ……キャッチャーは戻ってきても、あとアウトを取りに行かないといけないバッターを見て、足が竦むと思ったから」


 だからあおいチャンは、振り向いた時ちょっと不安そうだったのか。


「取りに行くなら、ノってる今がいいんじゃないかなってオレが思ったから」


 そこまで言われてやっと、おれの中で全部が噛み合ったような気がする。


「……だから、オレが勝手なことをした。だからオレは、最低なんだ」


 噛み合ったのは噛み合ったけど。自嘲するように笑う彼に、おれは思ったことを素直に言うことにした。


「ひなクンってさ、気が付いてないの? もしかして」

「え? なにが? ……あ。三番まで、オレがこんなことをしてたことはあいつも知ってるよ?」


 知ってるんだ……。ひなクンのことだからあおいちゃんには言ってないんだろう。きっとあおいチャンだからバレちゃったんだ。……流石あおいチャン。
 でも、今はそのことについて聞いてるんじゃない。


「いや、そうじゃなくって」

「……?」


 どうして君たちは、他人には敏感なくせに、自分のことに関しては鈍感すぎるんだ。


「……気付いてない振りなのか。言うのもなんか面倒臭いな」

「え? あ、アカネ?」


 ……ま、いっか。別に。おれは、応援するって決めてたし。


「ひなクンさ、それって自分のためでしょ?」

「え? ……まあ、選出はオレのためだよ。あいつを困らせるようなこと……を、みんながするとは思ってないけど。それでも、オレが安心しておけたから」

「うん。それで?」

「え? それだけ……だけど」

「なんで安心?」

「え?」

「なんで早い内がいいの?」

「え? それは、早い方が、あいつが……」

「なんでそう思うの?」

「え。……な、んで……?」