「一番は……?」
「……トーマ。大きくストライクゾーンを広げて、思いっきり空振ってくれた」
「……二番は?」
「アキくん。アキくんも同じ。だから、ピッチャーはちょっと自信ついた」
「三番」
「レン……だけど、ピッチャーが大暴投して、危うくデットボール。でも、いろいろ言った、言われたらしいけど、ちゃんと三振は取れたみたい」
なんとなーくわかったようなわからないような。でも、だったらもう、おれはいらなかったんじゃないかなって、ちょっと思ったり。
「オレもちょっと驚いた。ピッチャーはキャッチャーと仲直りしに行ったんだ」
「……そっか」
「キャッチャーは、ピッチャーがそんな風になってるのを知らなかったんだけど、わざわざ来たから、多分わかったんだと思う。……ちゃんと受けてくれることになったらしいよ」
そのキャッチャーが一体誰なのか。味方になろうとして逃げたのは誰なのか。
なるほど。少しずつ、噛み合ってきた。
「……それで、おれは?」
「ん? ……キャッチャーは戻ってきても、あとアウトを取りに行かないといけないバッターを見て、足が竦むと思ったから」
だからあおいチャンは、振り向いた時ちょっと不安そうだったのか。
「取りに行くなら、ノってる今がいいんじゃないかなってオレが思ったから」
そこまで言われてやっと、おれの中で全部が噛み合ったような気がする。
「……だから、オレが勝手なことをした。だからオレは、最低なんだ」
噛み合ったのは噛み合ったけど。自嘲するように笑う彼に、おれは思ったことを素直に言うことにした。
「ひなクンってさ、気が付いてないの? もしかして」
「え? なにが? ……あ。三番まで、オレがこんなことをしてたことはあいつも知ってるよ?」
知ってるんだ……。ひなクンのことだからあおいちゃんには言ってないんだろう。きっとあおいチャンだからバレちゃったんだ。……流石あおいチャン。
でも、今はそのことについて聞いてるんじゃない。
「いや、そうじゃなくって」
「……?」
どうして君たちは、他人には敏感なくせに、自分のことに関しては鈍感すぎるんだ。
「……気付いてない振りなのか。言うのもなんか面倒臭いな」
「え? あ、アカネ?」
……ま、いっか。別に。おれは、応援するって決めてたし。
「ひなクンさ、それって自分のためでしょ?」
「え? ……まあ、選出はオレのためだよ。あいつを困らせるようなこと……を、みんながするとは思ってないけど。それでも、オレが安心しておけたから」
「うん。それで?」
「え? それだけ……だけど」
「なんで安心?」
「え?」
「なんで早い内がいいの?」
「え? それは、早い方が、あいつが……」
「なんでそう思うの?」
「え。……な、んで……?」



