すべての花へそして君へ①


「今度さ! アニメ鑑賞会もしようね! あ。あとは漫画も読みたーい!」

「もちろん! これからたくさん、いろんなことしよ?」

「……! ……うんっ」


 約束を取り付けることも怖かったんだろう。それでも今、こうして楽しそうに笑う彼女を見るだけで、すごく幸せだ。


「おれはあおいチャンの味方だからね!」

「おお! 心強い! ……とっても。心強い」

「え。どうしたの」

「味方さんが。少ないみたいなんです。どうぞ」

「おう……。それは大変だ。どうぞ」

「でしょ。どうぞおおぉ……」


 まだ少し、胸が痛いけど。きっといつか、治まる日が来るだろう。……きっと。


「これからまだ、ちょっと行くとこあるんだ。アカネくんから元気もらったから、行ってくるね!」

「おおー! 頑張ってね! 応援してるよお~!」

「ありがとー! 行ってきまーすっ」


 そう言って彼女は、会場へと向かっていった。
 おれは、その背中が見えなくなるまでずっと。


「いってらっしゃーい!」


 手を振り続けた。


「いってらっしゃ~……。い……」


 振り続けた。振って、振って……、振り続けて……。
 彼女が見えなくなってしばらくして。まるで骨でもなくなったみたいに、だらりと一気に手が下がる。


「なにが……。いってらっしゃいだ……」


 行って欲しいわけないじゃないか。ここにいて欲しいに、決まってるじゃないか。
 ……また隠した。今のだけは、バレてないことを祈る、けど……。



「四番さん。お疲れ様」


 けど、最悪なタイミングで、彼が現れてしまった。