「つ、つばさくんの、男の子に慣れなくて」
(え)
「ま、前も言ったけど。つばさくんはかっこいいから。やっぱりそういうのには、ちょっといいなって。思うことがあって、ですね……」
(こいつ、何言ってんの)
「……包んでくれるような温かさとか、いつも頼ってた。助かってた。ほんと、いつもいつも。ありがとう」
(いや、それは俺もさっきのこともあるし、俺の方が感謝したいくらいだけど……)
「だから。な……泣かされることはないと思うんだけど。その……もし、相談したいこと、あったら。来ていいって言ってくれた、から……」
「……葵」
「い、嫌だなって思ったの。こんなこと言うの、ズルいと思うけど。ツバサくんは、わたしの心の拠り所でも、あったから。さ、さみし、くて……」
わかっていてそういうこと言うのは、本当に卑怯だな。俺の気持ちを知っていてそう言うのは……。
(……でも、それも嬉しかったりするんだよな、これが)
それはきっと、何の企みもこいつが持ってないからだろう。
「おいで? いつでも。俺はまだお前のこと、好きでいさせてもらうけど」
「……! ……うんっ。ツバサくんが、そうしたいなら」
「俺も一緒。お前がそうしたいならそうしたらいい。俺はお前と日向の味方だから」
「おう……。どうやらその味方さんは少ないようなんです」
「だろうな。よくよくわかってるんだよ。だからついてやらないといけないなって思ってたんだよな」
「マジですか」
「おう。マジだマジ」
でも、なんだかんだで俺らみんな、お前を日向に取られて悔しい反面、嬉しくもあるんだよ。
(だから、今は少なくても。その味方はいずれ全員になるだろうけどな。俺の予想)
ただ、人によって時間はかかるだろう。俺も、きっと相当時間がかかる方だろうな。
そんな話をしている頃には、お互いすっかり元の雰囲気に戻っていた。まるで、さっきのことが嘘のようだったけど、俺らのまつげは、やっぱり濡れて束になってた。
「あ! そうだった!」
「は? どうしたんだよ」
「あっち! ツバサくん! あっち見て!」
何故かいきなり廊下の突き当たりの方を指差した葵に従って、俺は素直にその指の先を追った。
「……あっちって言ったって、誰もいな――」
その時、こめかみ付近に何かが軽く触れ。
「……え」
ちゅっと音を立てて離れていった。



