すべての花へそして君へ①


「つ、つばさくんの、男の子に慣れなくて」

(え)

「ま、前も言ったけど。つばさくんはかっこいいから。やっぱりそういうのには、ちょっといいなって。思うことがあって、ですね……」

(こいつ、何言ってんの)

「……包んでくれるような温かさとか、いつも頼ってた。助かってた。ほんと、いつもいつも。ありがとう」

(いや、それは俺もさっきのこともあるし、俺の方が感謝したいくらいだけど……)

「だから。な……泣かされることはないと思うんだけど。その……もし、相談したいこと、あったら。来ていいって言ってくれた、から……」

「……葵」

「い、嫌だなって思ったの。こんなこと言うの、ズルいと思うけど。ツバサくんは、わたしの心の拠り所でも、あったから。さ、さみし、くて……」


 わかっていてそういうこと言うのは、本当に卑怯だな。俺の気持ちを知っていてそう言うのは……。


(……でも、それも嬉しかったりするんだよな、これが)


 それはきっと、何の企みもこいつが持ってないからだろう。


「おいで? いつでも。俺はまだお前のこと、好きでいさせてもらうけど」

「……! ……うんっ。ツバサくんが、そうしたいなら」

「俺も一緒。お前がそうしたいならそうしたらいい。俺はお前と日向の味方だから」

「おう……。どうやらその味方さんは少ないようなんです」

「だろうな。よくよくわかってるんだよ。だからついてやらないといけないなって思ってたんだよな」

「マジですか」

「おう。マジだマジ」


 でも、なんだかんだで俺らみんな、お前を日向に取られて悔しい反面、嬉しくもあるんだよ。


(だから、今は少なくても。その味方はいずれ全員になるだろうけどな。俺の予想)


 ただ、人によって時間はかかるだろう。俺も、きっと相当時間がかかる方だろうな。
 そんな話をしている頃には、お互いすっかり元の雰囲気に戻っていた。まるで、さっきのことが嘘のようだったけど、俺らのまつげは、やっぱり濡れて束になってた。


「あ! そうだった!」

「は? どうしたんだよ」

「あっち! ツバサくん! あっち見て!」


 何故かいきなり廊下の突き当たりの方を指差した葵に従って、俺は素直にその指の先を追った。


「……あっちって言ったって、誰もいな――」


 その時、こめかみ付近に何かが軽く触れ。


「……え」


 ちゅっと音を立てて離れていった。