――だがしかし。
「……らしいとは、何ぞや」
「それをオレに聞くの?」
「だって……」
『わたしらしい』……って、一体何?
おバカ? ……イエス。オタク? ……イエス。どアホ? ……イエス。ヘタレ? ……オーノー。
(あと思いつくのって言ったら、そこそこ腕が立つこととか、かわいいものに目が無いこととか、憑依体質……いや、これはらしいとは言えないか。 意図してやってることじゃないし……)
う~んと悩んでいると、隣のヒナタくんが少し動いた。どうしたのかな? と、再び顔を上げると「はあ……」と大きなため息をつきながら頭を抱えていらっしゃった。
しかも、流し目を食らったけど、その目は『大体考えてることわかるけどそれじゃないから』と言っているようだった。……なんかすんません。
「……すみません。わたしのことなのに『わたしらしい』がわかりません」
ギブアップ。ドヨヨ~ンと落ち込みながら「教えてください……」と、わたしよりもよく知っている彼にお願いすることにした。
「聞いてください」
「……へ?」
…………えっと。
「……お、教えてくださ」
「聞いてください」
えー……。何を? 何を聞けばいいんですか? 『わたしらしい』がわからないわたしは今、あなたに、何を聞けばいいんですかー……。
「……わからないことがあるなら、聞けばいいでしょ」
――今聞いとるがな。
(でも、ヒナタくんがそう言うってことは、これじゃない……)
他にわたしが聞きたいことを、ヒナタくんは聞けって言ってる。だがしかし、それが何かわからないぞ。え。どうしよう……。
「……わからないことを」
「……え?」
ボソッと呟いた声に、弾かれたように顔が上がる。発信源は完全に壁にもたれ掛かり、俯いたまま目を瞑っていた。
けれど彼は、その続きをちゃんと言葉にしてくれた。ゆっくりと閉じていた瞼を上げ、こちらを向いて「そうでしょ?」と、小さく笑って。
きっと、一瞬の出来事だったんだろう。たったそれだけ。些細なことだ。けれどわたしにはそれが、スローモーションのように見えた。まるで映画の、ドラマの、ワンシーンのように。
(どどっ、……どう、しよう……)
ものすごく、かっこよく見えた。



