すべての花へそして君へ①


「一番さん二番さんが、あなたになんと声をかけたのか。オレは知りません」


 自分のやり方は、もしかしたら違うのかも知れない。あいつの思うような三番じゃないかも知れませんけど、と。


「不安がること。怖がること。気持ちがわからないわけではありません。オレだって、あなたからずっと逃げてきましたから」

「……れんくん」

「ですから、……あおいさんが、オレみたいになってしまうのは嫌なんです」

「……そんなこと」

「あります」

(即答)

「言いづらいことを言わせようとしてることは、十分わかってます。でも、オレがどうしても聞きたいんで」

(どうしても、聞きたかったんだね……)

「というか、先に申し上げると、答えはわかってます。なんとなくですけど」

「え」

「だから、ちょっと聞き方を間違えました。まあそこで『はい、そうです』なんて言われたらどうしようかと思いましたけど」

「……れん、くん」


 彼の纏う雰囲気がいつしか、ふわっとやわらかいものに変わっていた。


「教えて欲しいんです。あおいさん。オレと初めて会った時、オレと似ている人に惹かれていませんでしたか?」


 答えはなんとなくわかっているんだと。だからハッキリ教えて欲しいと。彼はそう言ってたっけ。自分の中の答えと、一致させようとしてるのかな。きっと。


「……やさしいね。れんくんは」

「これは、甘やかしてるというんです」

「そっか。……わたしは今、甘やかされてるんだね」

「……あおいさん」


 そして、言い出しにくい言葉を続けて出せるように。ほんと、とってもやさしい三番さんだね。


「あのね、れんくん」

「はい」


『三番バッターの意味がわからなくて……』

 ……そんなの、わたしだってわかんないよ。
 トーマさんが、アキラくんがわかったのは、きっと、会場に帰ってきたツバサくんを見ていたから。それから、そうでないと振る舞っていても、やっぱり不安がっていたわたしを見ていたから。最後に、ヒナタくんと直接お話してたから。
 これだけでわかったら、ヒナタくんマスターだよ。わたしがなりたいよ。まだまだ全然だから。


「だから、不器用すぎるヒナタくんに呆れはするけど、レンくんが落ち込んだり悔しがったりする必要、わたしはないと思うんだよね……」

「……あおいさん。待ってた言葉と違います」

「あ。ごめん! 心の中が!」


 ゴホンとひとつ咳払い。いやはや、せっかく雰囲気を作ってくれたのに申し訳ない。


「……その頃はね、まだ好きってよくわからなかったから、正直なんて言ったらいいかわからないんだけど」


 でも、彼のおかげですっかり怖くなくなった。
 なんとなくでもわかっているからと。だから安心して言ってくれと。今までの関係が変わることは絶対にないからと。
 そう背中を押してくれた、彼にきちんと伝えないと。


「レンくんに似た人に、縋ってたことがあった。その人にね? 救ってもらったの。ちょっとだけ、気持ちを」


 これが好きなのかなって。その頃はちょっと思ってたところがある。だから、その人に似ているレンくんを、わたしは目で追ってた。