そして、疑問を解決してもらおう。そうしよう。
「……あの、あおいさん」
「ん? どうかしたの?」
「ちょっと九条の奴からよくわからないメールが来てて……」
頭の良い彼女なら、きっとこの意味がわかるんじゃないかと思った。
「レンくんが三番バッターって?」
「え。あおいさんも、このメールのこと知ってるんですか?」
「ううん。知らない」
「え」
勘がいいとは知っているけれど。そこまで来ると、もはや透視レベルになると思うんですけど。
「ヒナタくんから直接聞いたわけじゃないんだけどね? ……それ、実はわたしには絶対に言っちゃいけないことなんだよねー」
「え」
「なのにレンくんはわたしに言っちゃったね。きっとヒナタくんに怒られちゃうね?」
「そんな……。よくわかってもいないのに、怒られるなんて理不尽です」
「ははっ。そうだね。……ほんと、ぶきっちょさんだよね」
「……あおいさん?」
拭き終わったのだろうか。すっかり手が止まっている彼女をちらりと見上げて覗いてみると、何とも言えないような。でも、すごく嬉しいってことが十分伝わってくるような、複雑な表情をされていた。
「内緒にしておくからさ? よければそのメール、わたしにも見せてくれない?」
「九条に怒られるんでしょう?」
「ヒナタくんにも内緒にしておくから」
「……わかりました」
タオルを返してもらい、あの野郎から来たメール画面を彼女に見せた。
《レンちゃんは三番バッターだからね~
三振してもベンチに泣いて帰らないでねー》
「ね? あおいさん。意味がわからないで、しょ……」
自分は、何度見てもわからなかった。でも、そんな内容を見て、隣の彼女は眉尻を下げ、泣きそうな顔をしていた。
「……。ぶきっちょさん」
(……あおいさん)
彼女はただ、文章を愛おしそうに撫でていた。
不器用だと。バカだと。やさしすぎると。……ありがとうと。そう、何度も繰り返しながら。
「……あおいさん。よければ、オレが三番バッターの話、教えてくれませんか? 何も知らないままでもオレの場合すぐに三振すると思うんですけど、そもそもバッターボックスにも立てそうになくて」
「ははっ。……そうだね。ちょっと、言いづらいけど……」



