(ああ……。……やばい)
手で目元を隠しながら、なんとか顔を上げるけれど。絶対二人には、赤くなってるってバレてる。
でも、そんなのをどうこう言えないほど、……なんか。何か、口にしないと……。
「……。い」
「「い?」」
「……っ、今、世界中の誰よりも幸せな自信が……。あるっ……」
爆発しそう▼
「「……」」
いや、別にさ? 二人に自慢したいとか、そんなことじゃないんだって。ただオレが、あいつを想って爆発しそうだっただけで。……あっつ。
「……ねえアキ。別にこいつの惚気聞きたくないんだけど」
「仕方ない。これぞ青春」
「いや、意味わかんないし」
「でもまあ、よかったなって、思うよ。心の底から」
「……ああ。そうだな」
とかいう小声の会話、バッチリ聞こえてるからね。両サイドから脇腹を目掛けて入ってきてるパンチ決まってるし。でも、それが全然効いてないくらいには。……ほんと、やばい。
「……よし。しょうがない! ここは俺が、日向の代わりに葵ちゃんを世界で一番幸せにしてこよう!」
顔から火が出そうで、俯いてた俺の頭を、いきなり立ち上がったトーマがわしゃわしゃと撫で回したかと思ったら、さっさとどこかへ行ってしまった。
「っえ、ちょ……。……突っ込む前にどっか行かないでよ」
「俺も、行ってくる。葵を幸せにしてくる」
「えっ。ちょ、アキくんまで……?」
アキくんまで、オレの頭を撫で回してくるし。……一体なんだっていうんだ。あれか? 惚気たからか? 新手の嫌がらせかっ?
「日向。俺は葵には言わなかったんだ」
「……え」
「まだ好きでいることを。……言えなかったよ」
けれど、上から降ってきた言葉はあまりにも切ないもので。でも、上げた視線の先。そこにいたアキくんの顔は、何故かいつも通りな気がした。……けど。吐いてくれたから。
「……あき、くん」
「……幸せそうに笑う葵を見てたら、言えない」
「……」
「嬉しそうに笑うんだ。日向のこと、話してる時の葵」
「……そ、か」
あいつの前では言えなかった言葉を。八つ当たりでもなんでも、吐いてくれたから……よかった。
「だから、必ず幸せにしてやれ。トーマが言いたかったこと、もうわかってるんだろ?」



