――パクッ。
「え……?」
「はあ?」
ポイするんじゃなくて、さっさと突っ込めばよかったと、ちょっと思った。
「やっば! あおいちゃんの『あ~ん』付きとか、めっちゃ最高なんだけどっ!!!!」
彼に食べられるはずだった唐揚げサンは、敢えなくもう一人の悪魔さんに掻っ攫われていきました。結局目的達成ならず。
「と、とーまさん……」
「お前に言ってねえよ」
口が悪くなっている彼を最近時々見るんだけど……。取り敢えずご機嫌が頗る悪いのだけはわかるので、今は一先ず宥めておく。
そしていつか達成してやる。彼が満足する『あ~ん』をお届けしてやるんだ! 最初の目的は、ちょっとハードルが高いから、またいずれにしよう。
そ、そうっ! 気長にね! それこそ気長にいこうじゃないか! じゃないか……。ないか。……かー……。……はあ。
「二人してラブラブな雰囲気作っちゃってさ? しょうがないから俺がぶち壊しに来てあげたよっ」
「とーまさん……」
「帰れ」
キラリッて。眩しいウインクが飛んできた。取り敢えず避けておく。
相当キレてる彼を横目に、トーマさんはわたしの横にちゃっかり着席。ヒナタくんが襲って来ようものなら、きっとわたしを盾にする気だろう。彼ならやるだろう。そうだろう。そうに違いない。
「あおいちゃん。改めて、……おかえり」
「トーマさん……」
取り敢えず、さっきまで思っていたことは心の中で謝っておいた▼
「……っ、はいっ。ただいま、ですっ」
そうお返事すると、トーマさんの顔は一瞬、少しだけ泣きそうに笑った。



