「あーあ。本当にわたしは、みんなに救われちゃったんだなー」
「ん?」
ちょっと……いや、かなり疲れたので、軽く食事をとることに。バイキング料理を前に、オムライス以来何も口にしていなかったわたしのお腹は、ぐうう~と盛大に鳴った。
「確かに、式場でもみんながわたしに直接そう言ってくれたけど、やっぱりまだふわふわ浮いてるような、そんな感じだったんだ」
テーブルに腰掛け、取ってきた料理を口に運びながらの合間。実感のなかったわたしからは、そんな言葉が零れ落ちた。ヒナタくんも、アイくんに無理矢理突っ込まれて以来何も口にしてなかったからか、がつがつと料理を食べていた。相当お腹が空いているようだけど、こんな彼を見るのは初めてでちょっと驚き。
「でも、これでやっとわかったでしょ?」
「……うん。よかった」
――願いを、叶えられた。
安堵から零れたそれは、理事長から言われたもの。初めは、彼ができなかったことをわたしが、入学させてもらった代わりにするんだと、そう思っていた。
もちろん友達という、大切な存在になった彼らをなんとかしてあげたかった。だから、たとえ自分の時間が短くなっても、助けてあげたいって、そう思ったんだ。
人を傷つけることしかできなかった。自分に、人を救うことなどできるのだろうか。
初めは、それがすごく怖かった。もっと酷くなってしまったらどうしようと。
そして、願いを叶えていくごとに、その願いが理事長だけのものではないことを知った。友達一人一人の願いでもあり、わたし自身の願いでもあったんだと。
「ま。オレは願いに関しては反対だったけどね、はじめ」
「よくよく存じ上げております」
もし、理事長が願いを言ってこなかったら、今頃どうなっていたんだろう。
(まあでも、ヒナタくんなら……)
過程はどうあれ、今と同じような状況を作り上げているんじゃないかな。それくらい、ヒナタくんならやってのけそうだ。
願いを無事叶えられたのも、陰ながら支えてくれていた、彼の力あってこそ。ほんと、ヒナタくん様々だ。もちろん、理事長も様々だけども。
名前を呼ばれて、彼に助けてもらったあと。『狂わせた人』と『狂ってしまった人』をコズエ先生が連れて行った。その時、どうしてもわからなかったことを、ほんの少しだけ聞いてみたんだ。
――どうして彼らはわたしに、みんなを傷つけるように言ってきたのだろうかと。



