その色は『何もかもが終わった証』なんだね。君にとっての、『偽り』が。
「……? ……なに?」
「かっこいいなって」
「っ、ぅえ……?」
見た目も、シックでかっこいいけど。過去に踏ん切りをつけて、大きな一歩を踏み出して……。
わたしにとっても、色は大事なものだった。……彼にとっても、理由は違うけど色には大事な意味があったんだ。
(オレンジじゃなくなっちゃったのは、やっぱりちょっと寂しいけど……)
でも、それが君にとって、前へ進むために必要だったことなら。
「……うん。かっこいい」
大きな一歩。そうそうできることじゃないのに、それができるヒナタくんは、……やっぱりかっこいい。
「オレンジも好きだったけど、黒も好き。……ヒナタくんが、わたしは好きだから」
「……」
でも、ただでさえ恥ずかしいのに。かっこよくて見られないのに。大人っぽいヒナタくんに、慣れる日が来るのだろうか。
(だってだって、オレンジの時だって長い前髪がアンニュイな感じでかっこいいのに。……かっこいいのに、……のに)
黒で、それがもっと大人な感じにかっこよくなったと、さっきまでは思ってたんだけど。
「ひなた……くん……?」
「……っ、なに」
目の前の彼は、片手で顔を隠して俯いていた。
「……手、のけて?」
「っ、え。……い、いや。今は……」
「……じゃあ、わたしがのけたいから……のけるね」
「えっ、ちょ」
そっと掴んだだけの手首は、少しだけ抵抗した。でも、そのまま待ってると。彼は自分から、その手をそっと下ろしてくれた。
「ぐえっ」
あとすぐ、首に頭突きを食らった。なかなか的確に急所を狙ってくるね、あなた……。
「……ごめん」
赤く染まる顔。引き結んだ口。合わない視線。
「……くすぐったい」
「うるさい」
黒は、彼が一歩大人に近づいた証かと思った。けど、今首元に擦り寄ってきている彼の、一瞬見えた顔は……。
「甘えんぼさんみたい」
「うるさーい」
ちょっと、大人には見えなかったかな。
「……さっきのってさ、お得意のヤツ、だよね」
「え? さっきの?」
「ん」
「……さ、さっきの??」
「ん」
さっきのって、なんだ▼
というか、お得意のってなんだ。いっぱいあるぞ。
「心の声が漏れてたよ」
「え? 心の声?」
なんだろう。全然自覚ないけど……でも、別に漏れてたとしても口に出していったこととあんまり変わらないし。
「漏れたら、何か不味かった?」
「不味いに決まってるでしょ!」
「うわっと!」
いきなり顔を上げたヒナタくんは至近距離でそう訴えてきたかと思ったら。



