すべての花へそして君へ①


『つばにい!』

 そう言ってくれる葵に、……やっぱり。どうしても重なって。少しまだ熱を帯びたその笑顔に、どうしても触れたくなる衝動が抑えられない。


(でももう……っ、あれが最後なんだ)


 再び堪えようと、グッと手を握り。もうこんな気持ちとはさっさとおさらばしようと、意地の悪い顔で笑ってやる。


「弟に付き合いきれなくなったら、いつでも俺のとこに帰ってきていいからなー。お前なら大歓迎だ」

「いや、帰るも何も……」

「早く行け。クソ兄貴」


 そんな二人に、今はできないと思っていた笑顔が自然と零れたからよかった。……よかった。


「……ま。なんかあったらおいで。葵は特別に、惚気も受け付けてやるから」


 なんとか笑顔が零れているうちに「またあとで」と、俺は逃げるようにその場を後にした。