『つばにい!』
そう言ってくれる葵に、……やっぱり。どうしても重なって。少しまだ熱を帯びたその笑顔に、どうしても触れたくなる衝動が抑えられない。
(でももう……っ、あれが最後なんだ)
再び堪えようと、グッと手を握り。もうこんな気持ちとはさっさとおさらばしようと、意地の悪い顔で笑ってやる。
「弟に付き合いきれなくなったら、いつでも俺のとこに帰ってきていいからなー。お前なら大歓迎だ」
「いや、帰るも何も……」
「早く行け。クソ兄貴」
そんな二人に、今はできないと思っていた笑顔が自然と零れたからよかった。……よかった。
「……ま。なんかあったらおいで。葵は特別に、惚気も受け付けてやるから」
なんとか笑顔が零れているうちに「またあとで」と、俺は逃げるようにその場を後にした。



