すべての花へそして君へ①


(……まあもちろん、バカな弟を見守りたいって気持ちもあるけど)


 この状況、どちらかと言えば俺は被害者だ。こいつらの惚気を、どうして俺が受け止めないといけないんだ、真ん中で。俺ナシで話をしろ、そういうことはっ。


「あー……。あれだろ。キュン死にってヤツだろ」

「え。それってまだ使えるの? 死語じゃない? 大丈夫?」

「いや、俺も知んねえけど。……よかったな」

「よくない」

「は? なんでだよ。俺なんか言ってももらえねえし」

「当たり前だし言わせないしバカじゃないの」

「こんな状態にしておいて、なんで俺がそこまで言われないといけねえんだよ。なんだよこの、変な三角関係……」

「やめてよ、気持ち悪い」


 口は元気みたいで、相変わらずズバズバと反論してくるけれど、なんだか日向は、本当に疲れているようだった。


「……オレだって、いろいろ考えてんの」


 その『いろいろ』について、言われてすぐはわからなかった。まあでも、こいつが……あの日向が考えてることっつったら、葵のことだけなんだろうし。


(……ま。程々に頑張れよ)


 大変だなーと思うのと同時に、ほんの少しだけ不安に感じた。どうせ俺の不安なんて杞憂に終わるだろうけど。だってこの二人だし。
 はあ。とデカくため息を落とした俺は、もうそろそろ我慢の限界。


「お前ら、いい加減に……、――しろっ」


 流石にもう面倒くさくなったので、二人を引っぺがした。結構頑張ったと思うから、俺は俺自身を褒めてやりたい。誰も褒めてくんねえし。


「……はあ」


 しかも、案の定二人とも顔赤いし。
 なんだこれ。俺の立場って……。


「そういうのは二人の世界でやれ。俺を巻き込むな」


 再びデカいため息を落とした俺は、「それじゃあな」と二人に軽く手を上げ背を向けて、会場への道を戻ることに。一杯だけ引っかけようかとも思ったけど、飲み始めたら止まんねえだろうな。こりゃ自棄酒だな。