頭にたくさんの疑問符を浮かべているツバサくんは、まるで話が繋がらないといった表情だ。……なんでだ?
「確かにね、そりゃ言葉が欲しい時もあると思う」
「お、おう。そうだったな。そういう話をしてたんだよな……」
「出血死とか病気とか、なんかそっちの話をしていたかと……」と零しているツバサくんはさておいて。
「わたし全然免疫ないからさ、きっとそういうこと言われても受け取れずに逃げると思うんだよね」
「え」
「今まではそうだったよ? 受け取れなかったって言う方が正しいかも知れないけど」
「……葵」
向けてくれていた言葉も想いも。未来がなかったわたしは、それさえも受け取るのを拒否していた。今となっては、本当に酷いことをしてしまったと思っている。
(でも、その考え方も変えてくれたのが、怪盗さんなんだけどね)
ただ、考え方を変えたとしても、先のない未来のことを考えてしまって、ただ板挟みで苦しんでばっかりだったけれど。
「受け取れるようになった今は、正直そんなこと言われたら反応に困っちゃうよ」
今はまだ……誰に言われても。そんなことを言ったら、彼は怒るんだろうけど。
(いや。怒るよりも、だったら慣れるまで言っちゃるとか言われそうだな)
それはそれで困るからな。これは心の中での話ということで、彼には内緒にしておこう。
「ヒナタくんが、そういうのを素直に言ってくれないのも、ちゃんとわかってる。ええ。それはもう嫌と言うほど」
「う、うん。そうだな」
「でも、その辺は大丈夫だ。彼が言葉足らずのぶきっちょさんなのは、もう十分わかってるからね」
「……はは。そっかそっか」
小さく笑ったツバサくんは、どこか安心したような。そんな吐息をそっと漏らした。
そんなツバサくんのやさしい笑顔につられて。
「だからね? 心配してくれて、ありがとう」
わたしもそっと、感謝の言葉を零した。
「は? 別に、心配して言ったわけじゃねえよ」
「わたしはそう受け取ったからお礼を言ったのー」
「……言われるようなこと、全然言ってねえけどな」
「そんなことないのに」
そして、今言わないといけない大事な感謝も。
「わたしのこと、好きになってくれて……ありがとう」
込み上げてきそうになるものを必死に堪えて。わたしが今できる、最高の笑顔と一緒に――



