「修学旅行の時にさ、一緒に寝ただろ?」
「語弊がある」
「じゃあ、もう一人と一緒に寝てただろ?」
「それも語弊がある。というか、そういうことを言ってるんじゃなくて」
「そこはさらっと流せよ。その先が言えねえだろ」
と言われましても。いつの間にか一緒にベッドにいただけで、一緒に寝たとは、流石に言っちゃいけないでしょうよ。今はもう。
だって、あの人が怒っちゃうでしょ。怒っちゃうで済めばいいけど……その矛先となるのはどうせわたしだし。
「……朝さ、カーテン開ける姿がハルナと被ったんだよ」
「え?」
「別にお前と似てるとか、そんなことはないんだけどさ。夢にもなんでか知んねえけど久し振りに出てきてさ、それで朝お前見たら、すごい被った。……まあ、正気に戻ったあとは天使かと思ったけどな」
「え。それって正気じゃないよ?」
「正気だったんだよ。それだけ綺麗に見えたんだ、お前が」
「そ、そうですか」
お世辞ではない真っ直ぐな言葉に、どう切り返せばいいのか困っていると、上からクスッと小さな笑いが落ちてくる。
えっと思って見上げると、そこにはニイっと意地悪な笑みを浮かべているツバサくん。
「ほんとにいいのか? 俺だったらいつでもお前にいろいろ言ってやるよ?」
「い、いろいろって……?」
「いつでもお前が欲しい言葉、言ってやるよ。その先は考えろ」
流石のわたしでも、彼の言う『わたしが言って欲しい言葉』が、わからないなんてことはないけれど。
「……あのね、ツバサくん」
「ん?」
少し体を離して背の高い彼を見上げると、そこにはあまりにもやわらかい笑顔を浮かべているツバサくんがいて。それを見つめているだけで、引っ込んだ涙がまた溢れてきそうだったから、一度ぐっと瞼を閉じて、もう一度見上げた。
「多分吐血する」
「はあ!?」
「もしくは鼻血が止まらなくなる」
「は、……はあ?」
「それか心臓が過労死してわたし死んじゃうと思う」
「……ど、どうしてそうなった……っけ??」



