「こういうこと、言うべきじゃないって。言わなくてもいいって、わかってるんですけど」
それからカエデさんに連れられ、オレは花咲のお二人と一緒に、再び朝日向家のみんながいる部屋へと向かっていた。そうしてオレは、言わずにはいられなかった言葉を零した。
「どうかお二人を、……許してあげてください」
零れた声はあまりにも頼りなくて情けなくて。それに二人は驚いたようにこちらを振り向いた。
けれど二人は、そんなオレにすぐふっと笑う。
「ひなたくん。それは、オレらが決めることじゃない」
――それは、あおいが決めることだと。
「でもあおいちゃんのことだから、きっと今は嬉し泣きしてるか、笑っているんでしょうね」
――あおいちゃんが決めたなら、わたしたちも二人を嫌うことなんてしないわと。
彼らの表情は、悔しさ半分嬉しさ半分って感じで入り交じっていて、なんとも言い難かったけれど。それでも、あの二人を責め立てるようなことはしそうになかった。
「あれだな。是非お友達になろう、ひのちゃん」
「あなたのそういうところは、本当に素敵だと思うわ」
「え。なんでそう言いながら死んだ魚みたいな目で見てくるの」
「そういうお気楽な頭が、わたしも欲しかったなって思ったの」
「え? あげよっか?」
「要りません」
けど、いつまでも仲睦まじい二人を見て、なんて自分はバカなことを言ったんだろうと思った。言わずにはいられなかったからだけど……ほんと、余計なお世話だったな。
そしてあっという間に、階下はホールへと繋がる開けた場所に出てきた。オレはここまで。
「それじゃあカエデさん。あとはお願いしますね」
「はい。お任せください」
「ありがとな」
「ありがとう、ひなたくん」
「オレは、……ただ途中までついてきただけですから」
そういった意味での『ありがとう』ではないんだろうけど。今までしたことに関しても、オレは素直に彼らから礼なんて受け取れないから。
「……行ってやってください。多分あいつも、お二人が来たらすごく嬉しいと思うんで」
「ふふ。……ええ、そうね」
「ありがとう。それじゃ、行ってくるよ」
ぽんぽんと。わしゃわしゃと。オレの銀色の頭を撫でた二人は、カエデさんとともに彼らの下へと向かっていった。カエデさんが思うような修羅場は、きっとその一発で終わるだろう。
……まあでも、そのあとカエデさんが扉を開ける前に「自分の代わりに殴ってくれ」なんて頼んでたこと、オレは知らなかったけど。



