「お待たせしました」
「あ。カエデさーん。ちょうどいいところに」
ナイスなタイミングで、ビニール袋を提げた執事モードのカエデさん登場。突き出された袋を有り難くいただき、早速中身を確認。
「え? カエデさん奢ってくれるんですか。なんてやさしい人なんだ。有り難くそうさせてもらいますね」
「……なに勝手に一人で話してんだよ」
「え? さっきはお金はいいって言ったのにやっぱり払えって? カエデさん、職務怠慢ですか」
「……成る程。そんなに“あの部屋”がよかったか?」
「……別に、使ってないし」
「嘘つけ。お前なら使う。俺は自信がある」
「……別に、よくないし」
「は? ……なんでだよ。そんな一皮剥けたような、ツルンとした顔してるくせに」
まるで、オレがあいつの精気吸い取ったみたいな言い方しないでくださいよ。しかも……ツルンとしてるだあ? こちとら死にそうな思いで逃げるように出てきたんだっつの。
「な、なんだよ、その顔は……」
「あの時はあの時で大変でしたが、オレはもうこれから常に大変です」
「日本語喋れよ」
「……あのあとだって、いろいろあったってことですよ」
まあ、オレのことはさておいて。今はあいつのところに行きたくてうずうずしている目の前の二人の方が優先だ。
「カエデさんありがとうございました。あと、お使いついでにもう一つ頼みたいことが」
「はい。そちらは既に確保できております」
「え?」
まだ、何も言ってないのに。
カエデさんはというと、驚いてるオレに一瞬だけニヤリと笑いながらビニール袋を指差した。お使いの内容だけで、そこまでの配慮とは……。
「流石は有能な皇の筆頭執事ですね」
「変なプレッシャーかけんじゃねーよ」
ボソッとそう言いながら、ビニール袋に“それ”を入れてくれた。
それに感謝し、遅くなってしまったけど本題へ。
「お二人を朝日向さんがいる部屋に案内していただけますか」
「………………えーっと」
だいぶ渋ったなあカエデさん。まあ目の前の二人が『連れて行け』って目をギラギラさせてるからだろうけど。
「いいですか? ……一発だけ、ですから」
「なっ!? ……何をだヒナタ!!」
「え? ……殴るのを?」
「余計連れてけねーわ!!」
それだけ慌ててると、もうあんまり小声で喋ってる意味はないんじゃないかなって思うんだけど。そんなオレたちのやりとりに割り込んでくるように、二人は小さく頭を下げてきた。
「お願いします」
「手は出ると思いますが、そこまで大事にはしませんので」
「……花咲様」
「修羅場ですね」
「……お前なあ。人事みたいに……」
そのあと、結局のところカエデさんが根負け。二人はすぐ案内してもらうことになったから、その途中までついて行くことにして、オレらは会場をあとにした。



