「ふふ。……是非ね? ご家族の方たちとお話したいの。巻き込んでしまったことも一応謝罪しておきたいし」
「そんなことしなくていいんですけど。……でも、お二人はしないと気が済まないんでしょうね」
「そうだな。でも謝罪だけじゃなくて、きちんとお礼も言いたいんだ」
「お礼、ですか? うちの親は、特には何も……」
というかミズカさん。オレの父さん、一方的にあなたのこと敵視してるんですけど。……話しかけた途端、決闘とかはじまらないといいけど。そもそもうちの父さんが目の敵にしてることを、ミズカさんが知ってるのかどうかも危うい。
「こんなやさしい子に出会えたから」
「え」
「まあそういうことだ!」
ミズカさんvs父の行く末を心配していたら、何故か二人にそんなことを言われた。……そういうのを、本人目の前に普通に言えること。あいつにそっくりだ。あ、いや。あいつがそっくりだ。二人に。
「……オレも、二人に謝罪も感謝もあるんです」
駒にしてしまったこと。それから、あいつ――あおいを、助けて育ててくれたこと。そして、忙しいにもかかわらず、こうしてここ数日、時間を割いてくれたこと。
「また、あいつと一緒に言わせてもらおうと思ってるんですけど……」
いろいろご迷惑をおかけてすみませんでしたと。オレにあいつのこと話してくれて、ありがとうございましたと。
(この二人が、こんなにやさしい人じゃなかったら……)
オレはきっと、あおいの話すら聞けなかっただろうから。
「ふふっ」
「どういたしまして、だな」
そう笑い飛ばしてくれる二人に、オレはもう一度、心の中で感謝した。
「でもお二人は、うちの親と会う前に会いたい人がいるんじゃないですか?」
「「え?」」
きょとん、とした二人にちょっと驚いた。二人なら一目散に行って、文句の一つや二つ、ぶちかますんじゃないかと思ったんだけど。
「話でもあったと思うんですけど、二人は決してあいつのことを捨てたくて捨てたわけじゃないんです。まあ理由は何にせよ、子どもを捨てるなんてこと、あっちゃいけないことですけどね」
言いたいことがわかったのか、二人の空気が一気に変わる。でも、決してそれは、ピリピリとしたものではなくて……。やっぱり二人も本当にやさしいなと。それにオレは、小さく笑った。
「なので、殴るのは一発だけにしてあげてくださいね。あの人たちも、つらかったんで」
「別に、殴るつもりはなかったぞ!」
「ビンタはします」
「え。ひのちゃん?」
そう言うヒイノさんに思わず噴き出した。どっちかというと、ミズカさんよりもヒイノさんならそういうことをやるだろうなと思ってたから。「だと思いました」と、続きを話す。
「こればっかりはオレは関与できないんで。……お二人があいつのことを実の子どものように思っていたこと、あいつ自身もよくわかってますよ」
言葉に詰まる二人へ、オレはただなんとか笑った。
彼らがあおいのことを、実の親と同じくらいに……それ以上に、大切に思っていることもよく知っている。だから、きっと寂しいんだ。だからヒイノさんは、寂しい気持ちを隠して、その一発に込めるんだろう。
オレは彼らの問題に口を出すことはできない。考えるのは彼らであり、決めるのはあおいだ。
「お二人の本当の気持ち、あいつに、あいつの両親に、言ってやってください。向こうも絶対、本気で話してくれると思うので」
今のあいつには、本気しか伝わらない。また隠そうものなら、絶対また悲しむから。
(みんなの意見を聞いて、それできっと、答えを出すんだろう)
……いや。あいつのことだ。もしかしたらもう、胸の中にその答えはあるのかも知れないな。



