「ひなたくん。本当に、お疲れ様」
「銀色も似合うわね」
「え……?」
……そっか。まだオレ、銀色だったっけ。
そう言われて気が付く。見えないから当たり前なんだけど。
「……ま。もう見納めですね」
「ひなたくん?」
「あ、……いえ。なんでもないです。その、お二人には……」
二人には、初めの頃はあまり情報とかを伝えることができなかった。助けると、そう言ったのに。結局オレは、さっき足蹴にした人がいなかったら、何もできないままだった。
「何言ってるんだ。あおいがこうして元気でいてくれるのは、他でもない。ひなたくんのおかげだ」
「野菜もたくさん食べて、大きくなったなあ!」と。ミズカさんはまるで、息子……孫を見るような、やさしい眼差しをしていた。この人にもオレ、相当酷いことしたのに。
「その節は大変お世話に……というより、ご迷惑をおかけしたので。その、水鉄砲とか」
「ははは」
あ。顔引き攣ってる。やっぱり相当痛かったよね。
乾いた笑い声だけど……でも、もう全然気にしてないみたいだった。
「結局わたしたちには何も言ってくれないんだもの。だから野菜を送りつけてやりましょう! ってことになったのよ」
「え。いや、嫌がらせとかじゃないですよね。めっちゃおいしかったです。ありがとうございます」
なくなった頃に次のものが送られてきたりしたから、いつも本当に助かっていた。母さんがあんな状態で、家を空けることも本当はあんまりしたくなかったし。……なんでわかるんだろう。そこは主婦の勘なのかな。
「ひなたくんも、もう大丈夫なのね」
「ヒイノさん……」
「ご家族の方も、いろいろ大変だったんだな」
「……ヒイノさんの予想、当たってました」
ハルナの事件に、あいつが関わっているかも知れないということ。彼女は初めて会った時、名前を聞いただけで察していたから。
「ハルナの……姉のことは悔やまれますが。それでも、そんなことでずっと悩んでいても姉は喜んでくれないので」
きっと、空の上からずっと、オレに文句言ってたんじゃないかな。こんな回りくどいことをして、いろんな人に罪を背負ってもらって、あいつをたくさん傷付けて。
けれどヒイノさんは、そんなオレに「強くなったわね」と、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
(強く、……なったのかな)
いや。多分強くなったとかじゃなくて、考え方が変わった、って言った方が正しいんだろう。……まあでも。
「それもこれも全部、あいつのおかげなんですけどね」
「ハナって、言わないんだな」
「……やめてください。恥ずかしいんで」
名前の由来とか、今思えば何考えてんだってバカらしくなるから。……そんな温かい目で見てこないでくださいよ。ハズいんですから。



