すべての花へそして君へ①


「ひなたくん。本当に、お疲れ様」

「銀色も似合うわね」

「え……?」


 ……そっか。まだオレ、銀色だったっけ。
 そう言われて気が付く。見えないから当たり前なんだけど。


「……ま。もう見納めですね」

「ひなたくん?」

「あ、……いえ。なんでもないです。その、お二人には……」


 二人には、初めの頃はあまり情報とかを伝えることができなかった。助けると、そう言ったのに。結局オレは、さっき足蹴にした人がいなかったら、何もできないままだった。


「何言ってるんだ。あおいがこうして元気でいてくれるのは、他でもない。ひなたくんのおかげだ」


「野菜もたくさん食べて、大きくなったなあ!」と。ミズカさんはまるで、息子……孫を見るような、やさしい眼差しをしていた。この人にもオレ、相当酷いことしたのに。


「その節は大変お世話に……というより、ご迷惑をおかけしたので。その、水鉄砲とか」

「ははは」


 あ。顔引き攣ってる。やっぱり相当痛かったよね。
 乾いた笑い声だけど……でも、もう全然気にしてないみたいだった。


「結局わたしたちには何も言ってくれないんだもの。だから野菜を送りつけてやりましょう! ってことになったのよ」

「え。いや、嫌がらせとかじゃないですよね。めっちゃおいしかったです。ありがとうございます」


 なくなった頃に次のものが送られてきたりしたから、いつも本当に助かっていた。母さんがあんな状態で、家を空けることも本当はあんまりしたくなかったし。……なんでわかるんだろう。そこは主婦の勘なのかな。


「ひなたくんも、もう大丈夫なのね」

「ヒイノさん……」

「ご家族の方も、いろいろ大変だったんだな」

「……ヒイノさんの予想、当たってました」


 ハルナの事件に、あいつが関わっているかも知れないということ。彼女は初めて会った時、名前を聞いただけで察していたから。


「ハルナの……姉のことは悔やまれますが。それでも、そんなことでずっと悩んでいても姉は喜んでくれないので」


 きっと、空の上からずっと、オレに文句言ってたんじゃないかな。こんな回りくどいことをして、いろんな人に罪を背負ってもらって、あいつをたくさん傷付けて。
 けれどヒイノさんは、そんなオレに「強くなったわね」と、嬉しそうに顔を綻ばせていた。


(強く、……なったのかな)


 いや。多分強くなったとかじゃなくて、考え方が変わった、って言った方が正しいんだろう。……まあでも。


「それもこれも全部、あいつのおかげなんですけどね」

「ハナって、言わないんだな」

「……やめてください。恥ずかしいんで」


 名前の由来とか、今思えば何考えてんだってバカらしくなるから。……そんな温かい目で見てこないでくださいよ。ハズいんですから。