すべての花へそして君へ①


「だったらもう安心だ。じゃあ伝言を伝えておこう」

「え。で、伝言……?」

「おう」


『いい加減こっちに来てくれない? さっきの台無しになったんだけど。待ってる方の身にもなってよ』


「だってよ」

「シント……」


 きっとワクワクしてたんだろうなあ。……まあ、ぶっ壊したのはわたしじゃないんだけど。いやまあ、わたしにも責任があるっちゃあるから、彼が責められたら庇う気満々だけど。


「ごほん。……じゃあカエデさんに伝言を頼みましょう!」

「は? いやまあ、いいけどよ……」


 シントには……そうさな。


『お勤めご苦労! もうちょっとで行くから、いい子で待っててね♡』


「……って、ハート感を前面に出しておいてください。機嫌直るんで」

「流石元主人。扱いわかってんな」

「ははっ。どもども」


 伊達にあの子と七年もひとつ屋根の下で暮らしてませんから。でも、わたしの知らないことだってカエデさんは知ってるんだろうし、そこはどっこいどっこいだ。
 小さく笑ったあと、少しだけ空気を正した。


「もう少しだけ、話をしていきます。あちらの方は、きっとわたしが行かないと始まらないんでしょうけれど……」

「あっちは気にすんな。ああは言っても、ちゃんとわかってるんだから」

「……そうですね」


 七年一緒にいたんだ。それはもちろん向こうだって一緒だ。賢い子だから。きっとわたしが言いたいことだって、もうわかってるんだろうけど。


「……できれば、もう始めておいてもらえるよう、お願いしていいですか?」

「ああ。一応伝えとくな。……待ってるよ、アオイちゃん」


 ガシガシと、嬉しそうに頭を撫でてきたカエデさんは、コーヒーの乗ったトレーを渡したあと、後ろ手に手を振りながら部屋を出て行った。


「……あ。そういえば……」


 いい匂いの正体、一体何だったんだろうか。揚げ物っぽいと思うんだけど……もう持ってなかったな、流石に。