「だったらもう安心だ。じゃあ伝言を伝えておこう」
「え。で、伝言……?」
「おう」
『いい加減こっちに来てくれない? さっきの台無しになったんだけど。待ってる方の身にもなってよ』
「だってよ」
「シント……」
きっとワクワクしてたんだろうなあ。……まあ、ぶっ壊したのはわたしじゃないんだけど。いやまあ、わたしにも責任があるっちゃあるから、彼が責められたら庇う気満々だけど。
「ごほん。……じゃあカエデさんに伝言を頼みましょう!」
「は? いやまあ、いいけどよ……」
シントには……そうさな。
『お勤めご苦労! もうちょっとで行くから、いい子で待っててね♡』
「……って、ハート感を前面に出しておいてください。機嫌直るんで」
「流石元主人。扱いわかってんな」
「ははっ。どもども」
伊達にあの子と七年もひとつ屋根の下で暮らしてませんから。でも、わたしの知らないことだってカエデさんは知ってるんだろうし、そこはどっこいどっこいだ。
小さく笑ったあと、少しだけ空気を正した。
「もう少しだけ、話をしていきます。あちらの方は、きっとわたしが行かないと始まらないんでしょうけれど……」
「あっちは気にすんな。ああは言っても、ちゃんとわかってるんだから」
「……そうですね」
七年一緒にいたんだ。それはもちろん向こうだって一緒だ。賢い子だから。きっとわたしが言いたいことだって、もうわかってるんだろうけど。
「……できれば、もう始めておいてもらえるよう、お願いしていいですか?」
「ああ。一応伝えとくな。……待ってるよ、アオイちゃん」
ガシガシと、嬉しそうに頭を撫でてきたカエデさんは、コーヒーの乗ったトレーを渡したあと、後ろ手に手を振りながら部屋を出て行った。
「……あ。そういえば……」
いい匂いの正体、一体何だったんだろうか。揚げ物っぽいと思うんだけど……もう持ってなかったな、流石に。



