「あなた方が、とってもいい方たちで。……とっても残念です」
「え?」
(……ヒイノさん)
「だな、ほんと。マジで最低野郎だったら、顔の形変形するくらいぶん殴ってやってたし」
「へ……?」
(ミズカさん……)
二人に一瞬目を丸くした父と母だったけれど、すぐに二人の意図することがわかって、ゆっくりと視線を上げた。上げた二人の顔は、やっぱりちょっと……だいぶ赤くなってたけど、とても凛々しく見える。
「ほんと。……あなた方が、あおいちゃんを愛していて。……とっても残念です」
そう言うヒイノさんは、なんだか本当に残念そうで。ちょっと困ってしまうくらいだった。
「でも。……たとえわけがあったとしても、お二人がしてしまったことはあおいを傷つけました。だからただ、オレらが殴ったのはそれが理由です」
「あと、やさしすぎてちょっとムカつきましたけど」と、感傷に浸る前に続けて言ったミズカさんは、ちょっとかわいかったけど。でも、呆れではないため息をついている二人に、父も母も、なんだか困ったように笑っていた。
(ちょっと助け船……とは違うかも知れないけど)
そんな四人の間に、すっと入ってあげた。
「でもまあわたしは、ヒイノさんとミズカさんにも嘘……というか、隠し事されてましたけどね?」
「そ、それは……」
「ごめんなさい。あおいちゃん」
「あ。違いますよ? 別に責めてるとかではなくて、そうではなくて……」
二人が十分やさしいってことくらい、わたしはもうちゃんとわかってる。もちろん、父と母のことも。
「……ちゃんとわたし、わかってます。教えてもらいましたから」
脳裏に浮かぶのはただ一人。それは、ここにいる全員がそうだろう。彼のことを思うだけで、今はもうこんなにも幸せでいっぱいだ。
そうしていてハッと気付く。小さく笑ったあと「すみません」と断りを入れて、部屋の扉の方へとわたしは駆けて行った。
「すみませんカエデさん。入りにくかったですよね」
「……いや、今来たところだけどよ」
「嘘ばっかり」
だって、明らかに湯気の量が少ないもん。ふふっと笑っていると、カエデさんは心配そうにわたしの後ろを覗きながら「大丈夫か」と声をかけてきた。
どんな話をしていたか、バッチリ想像できていたんだろう。カエデさんの表情は本気の心配一色だ。そんなカエデさんに、わたしはニイっと破顔する。
「はい! 大丈夫ですよ。みんなやさしい方たちばっかりですから!」
大きめに出した声は、もちろん部屋の中の人たちに聞こえている。流石にわたしがいないからって、喧嘩はしてないだろうけど。思い切り笑っているわたしに、カエデさんもほっと安心したように小さく笑った。



