そんな話をしている時だった。部屋の中に、ノックの音が数回静かに響き渡った。この部屋を知ってるのはカエデさんと、あとヒナタくんしかいないはずだから、三人で「は~い」と声をかけたのだけれど……。
「ミズカさん! ヒイノさん!」
扉の向こうに現れたのは、カエデさんに連れられてやってきたわたしの大好きな二人だった。二人とはまだきちんと話せてなかったから、こうやってまた会えて、本当に嬉しい。
「花咲様がどうしてもお二人と話がしたいとおっしゃっていまして……」
勝手ではありましたがお連れしましたと。若干顔を強張らせているカエデさんは、このあとどんな会話が繰り広げられるか想像しているんだろう。
そんな風になってしまうのは、わからないでもないけど……でも、大丈夫だ。
「ありがとうございました、カエデさん。お二人にも何か飲み物を。あとは……こちらに任せてください」
「……はい。かしこまりました、アオイ様」
ふふっと笑いながらそう言ってあげると、わたしの雰囲気に安心したのか、彼は小さく笑ったあと飲み物の準備に一旦席を外した。そして、ふう……と小さく息をつく。
「未だに悔しい。ミズカさんにお掃除を負けてしまったのが」
「いやあおい、お前ぶっ飛ばしながら笑ってたから。それがめっちゃ怖くて、半分泣いてた奴がいたからな」
「あれま、そうだったのか! くそう。笑うんじゃなかったか」
「あおいちゃん、そういう問題じゃ……ないと思うわ」
懐かしい。本当に懐かしい。二人といると、今度はまたあの頃を思い出す。
二人も自分を庇っていたってことを知ったけれど、……それももう、苦しいばかりじゃなくなった。
「……おかえり、あおい」
「おかえりなさい、あおいちゃん。……本当に。よかったわ」
「はいっ。ありがとうございますお二人とも! ただいま帰りました~!」
今にも泣きそうな顔の二人に、わたしもつられてしまいそうになって、彼らに思い切り抱きついた。そうしたら二人、潰れそうなほど抱き締めてくるもんだから、二人の温かい匂いで一緒に暮らしていたあの頃が、より一層色鮮やかに蘇ってきて。
……ああ。あの頃も、つらいことはあったけど、楽しいことだっていっぱいあったんだよねと。過去を振り返るのが怖くなくて、つらくなくて、嬉しくて。鼻の奥が少し、ツンとした。



