すべての花へそして君へ①


 そんな話をしている時だった。部屋の中に、ノックの音が数回静かに響き渡った。この部屋を知ってるのはカエデさんと、あとヒナタくんしかいないはずだから、三人で「は~い」と声をかけたのだけれど……。


「ミズカさん! ヒイノさん!」


 扉の向こうに現れたのは、カエデさんに連れられてやってきたわたしの大好きな二人だった。二人とはまだきちんと話せてなかったから、こうやってまた会えて、本当に嬉しい。


「花咲様がどうしてもお二人と話がしたいとおっしゃっていまして……」


 勝手ではありましたがお連れしましたと。若干顔を強張らせているカエデさんは、このあとどんな会話が繰り広げられるか想像しているんだろう。
 そんな風になってしまうのは、わからないでもないけど……でも、大丈夫だ。


「ありがとうございました、カエデさん。お二人にも何か飲み物を。あとは……こちらに任せてください」

「……はい。かしこまりました、アオイ様」


 ふふっと笑いながらそう言ってあげると、わたしの雰囲気に安心したのか、彼は小さく笑ったあと飲み物の準備に一旦席を外した。そして、ふう……と小さく息をつく。


「未だに悔しい。ミズカさんにお掃除を負けてしまったのが」

「いやあおい、お前ぶっ飛ばしながら笑ってたから。それがめっちゃ怖くて、半分泣いてた奴がいたからな」

「あれま、そうだったのか! くそう。笑うんじゃなかったか」

「あおいちゃん、そういう問題じゃ……ないと思うわ」


 懐かしい。本当に懐かしい。二人といると、今度はまたあの頃を思い出す。
 二人も自分を庇っていたってことを知ったけれど、……それももう、苦しいばかりじゃなくなった。


「……おかえり、あおい」

「おかえりなさい、あおいちゃん。……本当に。よかったわ」

「はいっ。ありがとうございますお二人とも! ただいま帰りました~!」


 今にも泣きそうな顔の二人に、わたしもつられてしまいそうになって、彼らに思い切り抱きついた。そうしたら二人、潰れそうなほど抱き締めてくるもんだから、二人の温かい匂いで一緒に暮らしていたあの頃が、より一層色鮮やかに蘇ってきて。
 ……ああ。あの頃も、つらいことはあったけど、楽しいことだっていっぱいあったんだよねと。過去を振り返るのが怖くなくて、つらくなくて、嬉しくて。鼻の奥が少し、ツンとした。