……ぎゅっ。


「……!」


 ヒナタくんがそう言ってから、わたしたちはまた、皇へと歩き始めたのだけれど。


 ……むぎゅ。


「……!!!!」


 あれから、一言もしゃべっていません。ただ時折、繋いでいる手がぎゅって握られるだけでして……。
 修学旅行の時、ほんの少しだけこうして手を握ってくれたあの時には気付けなかったことがある。
 今までは、手を繋いでいてもほんの少しだけ、ヒナタくんの後ろを歩いてた。女の子扱いされて、どうしたらいいかわからなくて。戸惑っていたから。恥ずかしかったから。


(けど、今は真横)


 さっきまで見えてた彼の背中が見えなくて。でも、首を動かしてみようとする勇気は出てこなくて。ちょっと不安なのに、安心してる部分もあって。さっきまでは触れていなかった、彼の手首が、腕が、体のほんの一部が。歩く度よく当たるせいで、いちいち心臓さんが暴走するし。
 ただでさえ、こんな繋ぎ方をしてるのに。ただでさえ、触れ合う面積が増えたっていうのに。ただでさえ、緊張しているのに……。


 ――ぎゅ。


「――!」


 何も言わずに、ただ時々こうやってやさしい力を入れられて……。


(あべじょればぼお◯X▽□……)


 ――平静で居ろっていう方が無理な話だ。