――――――…………
――――……
「もうっ。お父さんのせいでいい匂いがどっか行っちゃったじゃん!」
「空腹で発言がおかしくなっている……」
それからカエデさんはお使いを済ませるべく、いい匂いだけ残して部屋を去って行った。グー……って軽快よくお腹が鳴ったのは、もはや言うまでもない。
「もうっ。なんでカエデさんを笑ったりしたのっ」
「え? ……ああ、あれは思い出し笑いでね」
「……思い出し笑い?」
母と一緒に首を傾げると、それに父は小さく笑いながらその理由を話してくれた。なんでも、高校時代からなんでも要領よく熟していたカエデさんに、「いつか執事なんかもやっちゃったりして……」と、冗談で話をしたことがあるらしい。実際問題、執事になろうと思ったらそういう学校に行かないといけないんだし、カエデさんの皇への採用はイレギュラーだ。
執事とは名ばかりの、本来彼が学校で学んだような秘書仕事をしているんだろう。……そう思ったら、なんて要領がいいんだカエデさん。
「その時カエデ、絶対嫌だって言ってたんだよ」
理由はただひとつ。「俺に執事は似合わない」だそう。
「バリバリ似合ってますけど……?」
「いやあ。俺が連れて行った喫茶店がマズかったんだと思うんだよねー、きっと」
どんな喫茶店なのかは……恐らく『メイド』の逆バージョンなんだろう。そもそも男同士で何故『執事』の方に行ったのやら。父が謎だ。その血をばっちり引いているわたしは、人のこと言えないけど。
「だから、あんなこと言ってたのに執事をやってたからさ。しかもバッチリはまってるし」
「似合ってるって最後まで言えなかったから、今度またお酒でも飲みながらいじってやるんだ」と、楽しそうに話してくれた。
小さい頃は、父から友人の名前が出てくることはなかった。それはもちろん、父の中での決め事だったんだろうけど。それでも、今こうやって昔のことを楽しそうに話している父を見ていると、自分まで楽しくなってしまうから、不思議だ。
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「もうっ。お父さんのせいでいい匂いがどっか行っちゃったじゃん!」
「空腹で発言がおかしくなっている……」
それからカエデさんはお使いを済ませるべく、いい匂いだけ残して部屋を去って行った。グー……って軽快よくお腹が鳴ったのは、もはや言うまでもない。
「もうっ。なんでカエデさんを笑ったりしたのっ」
「え? ……ああ、あれは思い出し笑いでね」
「……思い出し笑い?」
母と一緒に首を傾げると、それに父は小さく笑いながらその理由を話してくれた。なんでも、高校時代からなんでも要領よく熟していたカエデさんに、「いつか執事なんかもやっちゃったりして……」と、冗談で話をしたことがあるらしい。実際問題、執事になろうと思ったらそういう学校に行かないといけないんだし、カエデさんの皇への採用はイレギュラーだ。
執事とは名ばかりの、本来彼が学校で学んだような秘書仕事をしているんだろう。……そう思ったら、なんて要領がいいんだカエデさん。
「その時カエデ、絶対嫌だって言ってたんだよ」
理由はただひとつ。「俺に執事は似合わない」だそう。
「バリバリ似合ってますけど……?」
「いやあ。俺が連れて行った喫茶店がマズかったんだと思うんだよねー、きっと」
どんな喫茶店なのかは……恐らく『メイド』の逆バージョンなんだろう。そもそも男同士で何故『執事』の方に行ったのやら。父が謎だ。その血をばっちり引いているわたしは、人のこと言えないけど。
「だから、あんなこと言ってたのに執事をやってたからさ。しかもバッチリはまってるし」
「似合ってるって最後まで言えなかったから、今度またお酒でも飲みながらいじってやるんだ」と、楽しそうに話してくれた。
小さい頃は、父から友人の名前が出てくることはなかった。それはもちろん、父の中での決め事だったんだろうけど。それでも、今こうやって昔のことを楽しそうに話している父を見ていると、自分まで楽しくなってしまうから、不思議だ。



