「……ほへ?」
それから何故か両手を掴まれ、自分の耳を塞ぐように押さえつけられた。……なかなかの強さで。頭が歪みそうだ。
「――、――――――――」
(ん?)
またさっきみたいに、脳天に顎を置かれていた。だからそのせいもあってか、彼が何を言っているのかまではわからなかったけど、振動で何かを話していることに気付く。
目の前には父と母。そして何故か、目を丸くして驚いている。
「――――、――――――――」
(今度は、なんか嬉しそうな顔になった……)
でも、両親をそんな顔にしてくれた人の方は、残念ながら全然見えない。ちょっと動かそうと思ったら、それ以上に押さえつけられて首が折れそうになったから早々にやめた。
「……何言ってたの?」
「ひみつ」
「えー。ずるーい!」
父と母の方を向いても、何だか楽しそうにしてるだけで全然教えてくれそうな雰囲気じゃないし。当の本人はこんな調子だし。
「会場行ったらまともに話せる時間が取れなくなるくらい揉みくちゃにされるから今取り敢えず話しておきたいこと話すことでもみんな早くあんたに会いたい話したいって思ってるからそこら辺のことも考えてあげてね」
「随分マシンガンで話題変えたね」
「まあ、もう二人と一生会えないってことはないんだから、またいずれ……でもいいと思うけど。でもせっかくなんだから、今はしっかりちゃんと話すこと。いい?」
「スルーの方向なんだね……。はーい。わかりましたー!」
「……まあ、いずれわかるよ」
「……? そうなの?」
「そうなの」
「んむぅ……」
もうこの話は終わりと言いたげに唇を抓んできたヒナタくんは、小さく笑ったあと「お礼はそのうち」と言いながらさっさと出て行ってしまった。
「……なんだ、お礼って」
とっても気になった。恐らく父母と話していたことなんだろうけど。
まあいずれ、そのうち教えてくれるそうだから、その時を楽しみにしておくことにする。



