すべての花へそして君へ①


「積もる話もあるでしょうから、たくさん、話してあげてくださ」


 そっとわたしたちに近づいてきたやさしい声は、何故か途中で止まってしまった。


「……はは。流石親子」

「……?」


 彼が言っている意味がわからなくて、わたしたちは同じように首を傾げた。お互いの顔を見ると、みんな涙で目元がぐちゃぐちゃで。……このことを言ったのかな、と小さく笑い合った。


「ひなたくんには、感謝してもしたりないな」

「カナタさん、オレは」


 父の顔はくしゃくしゃに歪み、すっかり眉毛も下がっていた。……わたしも、そんな顔になった。


「ありがとう……。ひなたくん」

「……クルミさんまで」


 父に続いた母も、同じような顔で涙を流して。わたしもつられて、また涙が零れた。


「ひなたくんっ!」

「……あおい」


 でも、涙だけじゃない。それ以上に、笑顔だって零れていた。


「……こいつが笑えてるんで。まあ、よかったです」

「へへ」


 くすぐったそうにしている彼の腕をそっと引いて、輪の中に入れて。ぶっきらぼうな言葉だけれど。いつになくやわらかい雰囲気のヒナタくんに、なんだか嬉しくなってまた笑みが零れた。