「積もる話もあるでしょうから、たくさん、話してあげてくださ」
そっとわたしたちに近づいてきたやさしい声は、何故か途中で止まってしまった。
「……はは。流石親子」
「……?」
彼が言っている意味がわからなくて、わたしたちは同じように首を傾げた。お互いの顔を見ると、みんな涙で目元がぐちゃぐちゃで。……このことを言ったのかな、と小さく笑い合った。
「ひなたくんには、感謝してもしたりないな」
「カナタさん、オレは」
父の顔はくしゃくしゃに歪み、すっかり眉毛も下がっていた。……わたしも、そんな顔になった。
「ありがとう……。ひなたくん」
「……クルミさんまで」
父に続いた母も、同じような顔で涙を流して。わたしもつられて、また涙が零れた。
「ひなたくんっ!」
「……あおい」
でも、涙だけじゃない。それ以上に、笑顔だって零れていた。
「……こいつが笑えてるんで。まあ、よかったです」
「へへ」
くすぐったそうにしている彼の腕をそっと引いて、輪の中に入れて。ぶっきらぼうな言葉だけれど。いつになくやわらかい雰囲気のヒナタくんに、なんだか嬉しくなってまた笑みが零れた。



