本当は、言わないでおくつもりだったんだけど。内心でレンくんに平謝りしつつ、レンくんはあなたに忠実だっただけなのだと教えて差し上げた。
「……それで、レンに薬を飲ませてもらうのに襲われたと。そういうことですかね、あおいさん」
「そ、そういうことでござる……」
未だに空気がピリピリとしていましたので。若干恐る恐るお答えした。
「はあああああー……」
でもそれも一瞬で。大きく、それはもう大きくため息を吐きながら、扉に頭を肩をつけたヒナタくんは、ものすごく後悔をしているようだった。ちなみに、まだ部屋から出ていません。内扉側です。
「ひな」
「いや……あーうん。そうだね。言ったね確かに」
「マジでやったのかよ」「まあやったらぶっ飛ばすって決めてたけど」とかなんとか聞こえた気がしたが、そこは敢えて掘り返さないでおこう。多分、飛び火してくるから。
レンくん。銀色を見たら今日は直ちに脇目も振らず逃亡しようね。そうしないと命が本気でヤバいかも知れないからね。
「ごめん。オレが悪いわ。庇ってくれてありがとう」
嫌そうに頭をポリポリ掻きながらため息交じりのヒナタくんは、そんなことを言ってしまった自分がどうやら許せないみたいだった。
「いや、待ってヒナタくん。元はと言えば寝なかったわたしが悪いわけで……」
そう。本当に本を正せばわたしのせいなんだ。
『寝てしまえば、もう二度とわたしではなくなるかもしれない』
そんなことを思っていたわたしは、もう寝るのが怖かったから。あんなことをいきなりされてびっくらこいたけど、レンくんだって悪くないし、そうするように言ったヒナタくんだって悪くない。二人とも、わたしの体を案じてそうしてくれたんだから。
「確かにそうかも知れないけど、レンに襲えって言ったのは間違いじゃないし、ぶっ殺すの決定だし」
「え。決定なの……?」
「そんなの本を正してきたらモミジのせいだし、あんたを拾った道明寺のせいだし、そもそもあんたが生まれてきたせいだし」
「え。う、生まれたわたしのせいなのか……」
「そこまで正したらってこと。……だから、一番近いオレに原因がある。だから早く行ってレンを殺しに行かないと」
「いや! 流石にさせないから! 全力でヒナタくんを止めるし、わたしはレンくんを庇うよ!?」
恩人二人がそんなことになっているのに、みすみす見過ごせるわけないじゃないか。……ヒナタくん、レンくんになら本気でしかねないし。なんとなく。
「はあ。……するわけないでしょ? お礼言いに行くんだってば」
「え?」



