「もう完全にパーティーはじまってるから急がないと。ほら早く。飲み物に毒仕込まないといけないんだから」
「殺すのっ!? いやいや! ちょっと待ってってば!」
いきなりどうして、こんな物騒な話をしているかというとだ。発端は、彼がふと我に返った時の言葉が原因でした。
『……今のは、セーフ……?』
内心、さっきまでの獣さんはどこへ行ったんですか? って言いたくなりました。いきなり怯えた小動物のようになった彼を見て、わたしが何かをしてしまったのではないかと思うほど。
でも、そんなことを言おうものなら、またキッスのゴングが鳴りそうだったので慌てて飲み込みまして。
彼がそう聞いてくるのは、わたしが彼からまだ彼氏として何も受け取ってあげられないことについてだろう。
実際問題『ここまでやっておいて、なにがセーフだこの野郎』と言いたくもなったけど、こんなこと言ったら今度は『ネガ日向』にまた変身しかねないのでね。
彼氏有力候補(予約済み)さんは慎重に扱わなくてはいけないのです。そこは屁でもないんですけど。
『死ぬ寸前はアウトだよ』
『そっか。それはオレ悪くないからまた特訓ね』
結局のところ、バッチリ余計なことを言ってしまったのは言うまでもない。もうこれは取り返しがつきそうにないのでね。これはいいんです。……で。こっからが問題なんですよ。
『でも、本当に死にそうだったんなら、嫌だったんなら、ちゃんと言ってよ。手突き出すとかしてさ』
――じゃないとオレ、さっき結構本気であおいのこと殺しにかかってたんだけど。
そんなことをサラッと仰るから目ん玉落っこちるかと思いましたけどね? 本気で殺されそうになってたから。
でも、わたしは正直に言ってやったのです。
『死ぬかと思ったけど、嫌じゃなかったんだからそんなことしない』
……って。そう言ったら、なんて言ったと思いますか。
パターン①
『……言ったじゃん。殺人犯なんてオレは嫌だ、って』
パターン②
『何それ。オレにあおいのこと殺せって言ってるわけ?』
パターン③
『……はあ?』(※マジギレ)
そうですね。ニュアンスとしては、どれも一緒です。でもきっと、ヒナタくんマスターのあなたなら、このちょっとしたニュアンスの違いでも正解がわかることでしょう。



