その(よる)、わたしは(おも)()ってお(とう)さんに、バレエを(なら)わせてほしいってお(ねが)いしてみることにした。

「お(とう)さん、わたし、バレエをやってみたい」

 夕飯(ゆうしょく)(たべ)べた(あと)、リビングでテレビをみていたお(とう)さんは、テレビの電源(でんげん)()ってわたしの(かお)()た。

「バレエ? (とも)だちの発表会(はっぴょうかい)()たからか?」

 声で、お(とう)さんがダメって言うつもりなんだってわかる。
 発表会(はっぴょうかい)を見て、友だちのマネしたくなっただけって(おも)われているのかもしれない。
 たしかに、サラちゃんやルイくんに影響(えいきょう)されたんだけど、それだけじゃないもん。

今日(きょう)(きゅう)(おも)ったんじゃないの。少し(まえ)から、バレエをやりたいなって(おも)ってた。でもその(とき)は、今からじゃ(おそ)いと(おも)ってあきらめたの」

 でもね、やっぱりあきらめられないの。……そうったえようとしたのに、お(とう)さんが、先に言う。

「今からじゃ(おそ)いって(おも)ったんだろ? お(とう)さんもそう(おも)う。他の子はみんな、もっと小さい(とき)からがんばっているのに、今からはじめたってしかたないだろ」

「……うん」

 やっぱりそうだよね。
 わたしも最初(さいしょ)はそう思って、一度はあきらめたんだ。
 お(とう)さんの言葉(ことば)に、さっき舞台(ぶたい)でジャンプした(とき)のワクワクした(おも)いがしぼんでいく。

「なにか(なら)(ごと)をしたいなら、ほかのことにしなさい」

 それだけ()うと、お(とう)さんは漢字(かんじ)自分(じぶん)部屋(へや)に行っちゃった。