運と運命

するとすぐに電車の到着アナウンスがホームに響く。

「危ないですので、黄色い線までお下がりください」

アナウンスと同時に、彼はイヤフォンを取った。その瞬間、彼はちらりと前を向いた。

私と目が合った━━━。

彼はなにかに気づいたような表情をしている。
なんだかこの時間だけは時が進むのが遅く感じた。私だけの世界にたった今、彼しか入れないのではないのか。思わず視線を奪われてしまう。

数秒後には電車が到着して、風がなびく。
それと同時に、私の世界は一気に元に戻るように広がっていった。

横に移動して、降りる人を待つ。
彼は私の後ろでまたこっちを見て口を動かす。

「また会いましたね」

と優しく言葉をかけてくれた。どこか安心感のある笑顔をみて、相手も覚えていてくれたのだと、少し嬉しくなって後ろを振り返るとつい、笑顔になった。