クールな同期は、私にだけ甘い。


それは、ある夕暮れ時。リビングのソファで、母と兄と三人、寄り添って見ていた清涼飲料水のテレビCMだった。

CMが始まった瞬間、画面いっぱいに広がるのは、夕焼けに染まる茜色の河原。金色の光が水面に反射し、まるで宝石のようにきらめいていた。

そこで楽しそうに笑い合う家族の温かい笑顔と、グラスに注がれた透明な液体が、シュワッと弾ける泡の音。そして、その全てを包み込むように流れる、優しくて透明感のある歌声。

その映像は、私の家族の笑い声と重なり合い、胸の奥にじんわりと広がる温かさとして心に刻まれた。

画面の向こう側の世界が、こんなにも人の心を震わせることができるんだと、幼い私は強い衝撃を受けた。

このとき、私は強く思った。「私も、いつかあのCMのように、見る人の心を温かく満たし、希望を与えるようなデザインを創りたい」と。

それが、この業界に飛び込んだ私の夢の原点であり、デザイナーという道を志した、たった一つの理由だった。


真面目で、一度やると決めたらとことん突き詰める性格。しかし、完璧を追い求めるあまり、プレッシャーに押し潰されそうになる脆い一面も抱えていた。

仕事に打ち込みすぎた結果、恋愛はいつも後回し。友人たちが次々と結婚していく中、私は今、夢すら見失いかけている。

声が震え、また涙がこみ上げそうになるのを必死に堪える。

情けない。同期の彼に、また弱音を吐いてしまった。

それでも萩原くんは黙って、私の言葉の続きを待つように耳を傾けてくれている。

箸を持ったまま、私の顔をじっと見つめる彼の視線は真っ直ぐで、私の不安をすべて受け止めてくれるようだった。

そんな萩原くんを見ていると、不思議と口が開く。