テーブルの上の彼のトレイには、私と同じ日替わり定食がのっている。
「いただきます」
萩原くんは箸を手に取ると、迷うことなく唐揚げを口へと運ぶ。
満足そうに頷く彼を見て、唐揚げが好きなのかな? と、微笑ましくなった。
「そういえば、昨日の企画、ちょっと煮詰まっているみたいだったな。何かヒントになることは、見つかったか?」
萩原くんは私を見つめ、静かに問いかける。
彼の視線が、私の瞳の奥まで見透かすようで、身が竦んだ。
けれど、萩原くんが仕事の話題から切り出してくれたことに、私は少しだけホッとする。
昨夜のことには触れず、いつも通りに接してくれる彼の気遣いが嬉しかった。
「ううん、全然ダメ。何度やり直しても、しっくりこなくて。この仕事、やっぱり自分には向いてないんじゃないかって……」
私は、力なく答える。
萩原くんの真っ直ぐな視線に、ふと、幼い頃の記憶が鮮やかに蘇った。



