クールな同期は、私にだけ甘い。


なんとなく気まずさを感じ、私は彼のことを避けるように自分のデスクに腰をおろした。

パソコンを立ち上げると、昨夜の企画書が開きっぱなしで、胸が締めつけられる。

キーボードに添える指先が、無意識に震えた。

昨日の失敗が、ずっと脳裏から離れない。

鉛のように重い頭で、必死にディスプレイの文字を追うけれど、全く頭に入ってこない。

集中力も途切れがちで、先輩の指示も上の空。

この日の午前中、私は視界に入る萩原くんの姿に、胸がソワソワとざわつくばかりだった。



昼休みになり、私はひとり社員食堂へと向かった。

誰とも話す気分になれず、食堂の隅にある、あまり人が座らない席を選んだ。

トレイにのった日替わり定食は、好物の鶏の唐揚げ。それなのに喉を通らず、箸を動かす手が重い。

それでも何とか口へと箸を運びながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

都会の空はいつも通り高く、白い雲がゆっくりと流れていく。

「……隣、いいか?」

そのとき、視界の端に影が差した。

顔を上げると、目の前にはトレーを手にした萩原くんが立っていた。

「は、萩原くん!?」

「そこ。空いてるなら、座るぞ」

「えっ……」

私が答えるよりも先に、隣の席に腰をおろす彼。いくら何でも、ちょっと強引すぎない?