シャワーを浴び、メイクを施し、いつものオフィスカジュアルに身を包む。
都心の駅から少し離れた、築浅のワンルームマンションに一人暮らし中の私。
鏡に映る自分は、目の下にクマは残るものの、顔色は昨夜より幾分かマシに見えた。
家を出て会社へ向かう電車の中、私はつり革を手に、何度も昨夜の萩原くんのことを思い返していた。
『頑張るのも良いけど、あまり無理するな』
あのクールな萩原くんが、私にあんなにも優しい眼差しを向けてくれたこと。それはまるで、私を支えてくれる光のように感じられた。
あの瞬間、彼の瞳の奥に宿っていた深い優しさは、決して気のせいじゃないはずだ。
オフィスに着くと、萩原くんはすでにデスクに座り、いつもと変わらない冷静な表情でパソコンに向かっていた。
その完璧な横顔は、昨夜の優しい彼とはまるで別人のようだ。
廊下を通り過ぎる女性社員たちが、彼に視線を送り、ひそひそと何か話しているのが聞こえる。
「萩原さんって、本当にスマートよね」
「今日も素敵……」
そんな声に、胸がチクリと痛んだ。
やっぱり彼は、平凡な私なんかとは違う、遠い存在なんだ。
昨日のこと、萩原くんは覚えているかな?
私、萩原くんの前であんなに泣いちゃったし、会うのは恥ずかしいな……。



