クールな同期は、私にだけ甘い。


──ジリリリリ……。

翌朝。煩わしい目覚まし時計の音が、遠くで響く。

「……んん、もう朝か……」

ベッドから重い体を起こし、ぼんやりとした意識の中で、昨夜の出来事が鮮明に蘇る。

真夜中のオフィスで、萩原くんが落ち込む私の頭を、優しくポンポンと撫でてくれたこと。

そして、私の嗚咽を受け止めるように、黙って背中を撫でてくれた、あの温かい手の感触。

私は、自室のデスクの上に置かれた缶コーヒーを見つめる。

それは、昨夜私が落ち着くまで傍にいてくれた萩原くんが、何も言わずにそっと置いていってくれたもの。

「昨日のこと、やっぱり夢じゃなかったんだ」

彼がくれたコーヒーの温かい感触を手のひらに感じながら、再び企画書と向き合ったあの深夜。

あれほど張り詰めていた心が、不思議と軽くなったのを覚えている。萩原くんの温もりが、凍りついた心を少しずつ解きほぐしてくれるようだった。

昨夜のことを思い返すだけで、胸の奥にじわりと熱が広がる。

それと同時に、あの完璧で社内でも一目置かれている萩原くんに、情けない自分をさらけ出してしまった恥ずかしさが込み上げてきた。

けれど、それ以上に、今まで感じたことのない深い安堵と、じんわりとした温かさが私の心を包み込む。

彼のあの温かい手のひらが、まだ頭に残っているようだった。