クールな同期は、私にだけ甘い。


翌日の午後。私は自分のデスクで、溜まっていたメールの返信作業をしていた。

ふと、コーヒーを淹れに給湯室へ向かおうと立ち上がったそのとき、「そうだ」と広報担当から社内報の記事確認を依頼されていたことを思い出す。

デスクに座り直し、社内情報共有プラットフォーム「リンクコネクト」を開いた。

記事の確認を終え、何気なくトップページに表示された「話題の投稿」に目をやったとき、私は凍りついた。

そこに表示されていたのは、星野さんの投稿。陽光差し込むカフェのテラスで、コーヒーカップを手に微笑む星野さんと、その隣で穏やかに笑う萩原くんの姿。

【萩原さんと週末カフェ巡り♪ 新しい企画のインスピレーション探し。最高のアイデアが浮かびそう!】

コメントの最後に添えられたメッセージが、私にはまるで嘲笑われているかのように感じられた。

萩原くんは、私とはこんなふうに休日に出かけたりしない。

彼にとって、私はあくまで「仕事の同期」なのだと、頭では分かっている。

理性では理解しているのに、星野さんの投稿に写る萩原くんの笑顔が、私に向けられるそれよりもずっと自然で、心から楽しんでいるように見えた。

言いようのない孤独感が襲ってくる。

萩原くんとこんな風にプライベートで時間を共有できる星野さんが、私には眩しく、同時に自分の平凡さを突きつけられているような気がした。

「……っ」

喉の奥がカラカラに乾き、胸が締めつけられる思いがした。


その日一日、私は星野さんの投稿のことが頭から離れなかった。

仕事中も、ふとした瞬間に萩原くんと星野さんの笑顔が脳裏をよぎり、胸の奥がざわつく。

集中しようとするほど、彼の姿が以前よりもずっと遠くに感じられ、恋心を自覚して以来、この胸の痛みは日に日に増していった。